被爆の実相、観光で継承 「機会や場所つくりたい」―広島大准教授

東京, 8月7日, /AJMEDIA/

 被爆者の高齢化や死亡に伴い、被爆の実相を次世代にどう伝えていくかが課題になっている。広島大平和センターのファンデルドゥース・瑠璃准教授は、観光を通じた継承の研究に取り組む。広島の街に多数残る被爆建物などを「体感」することで、「当事者感が芽生え、深く知りたくなる」と語り、きっかけとなる機会や場所をつくることに意欲を見せる。
 ファンデルドゥース准教授は広島生まれで、戦争の記憶と平和が専門。被爆地が平和都市として持続的な影響力を持つためには、被爆体験の継承をテーマにした研究が重要と考えている。
 その一環として、今年5~6月ごろ、欧州やアジア太平洋地域から訪れた観光客を連れ、川を下る船から広島市内を案内した。参加者からは当初、「原爆のことは嫌ですからね」などと、くぎを刺されていた。
 しかし、当時の川沿いの街の話をしながら観光地を巡るうちに、「この辺に住んでいた人はどうなったんですか」といった原爆投下時に関する質問が次々と投げ掛けられた。観光を終える頃には、参加者の多くが原爆被害に関心を持ち、自身のスマートフォンで疑問を調べるなど、自ら理解を深めようとする姿が見られたという。
 「興味を持つきっかけは人それぞれ。観光で遊びに来るだけでもいろいろな出会いがあるはず」とファンデルドゥース准教授。まずは広島に来て被爆地を五感で感じ、「被爆者の経験を自分に引き寄せて考えることが、被爆体験を継承するきっかけになる」と話す。
 同准教授は現在、広島市が推進する平和と観光を組み合わせた施策「ピースツーリズム」の推進懇談会に名を連ねる。お年寄りや障害者など誰もが巡りやすい街の整備のために尽力している。

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