<生き物ヒトとなり>(105)イヌビワとイヌビワコバチ 花粉運びで”専属契約“

東京, 04月21日 /AJMEDIA/

多くの植物は、鮮やかな花を咲かせて昆虫を引き寄せ、蜜などを報酬として花粉を運んでもらっている。

 このような虫ちゅう媒ばい花かの場合、昆虫がピンポイントで花粉を届けてくれるため、風まかせの風ふう媒ばい花かのように大量の花粉を作って飛ばす必要はない(したがって、ヒトにとっての花粉症問題も生じない)。いわば、「広告費」(=目立つ花)や「配送料」(=報酬の蜜)をかけて昆虫を雇うことにより、「花粉ロス」の大幅な削減に成功したと言える。

 ヒトの世界ではドライバー不足が懸念されているが、植物の世界でも、確実に送粉者を確保するためには、他種より魅力的な花を咲かせる必要がある。つまり、広告費や配送料がかさんでしまう。

 イヌビワなどのイチジク属の植物は、「競争入札」ではなく、イチジクコバチの仲間と「専属契約」を結ぶことにより、広告費の削減に成功している。

 漢字で「無花果」と書くように、イチジクは花が咲かずに実ができるように見えるが、実際には私たちが食べる部分がもともとは花の集まりであり、内側に多数の小さな花を咲かせる。

 イチジク属のほとんどの種は、特定のコバチが花粉を運ぶ。例えば、イヌビワの花粉はイヌビワコバチという種だけが運ぶ。その代わりイヌビワは、自身の種子を作るための花に加えて、コバチの幼虫が育つための花をつくる。

 イヌビワコバチはイヌビワなしでは生存できず、イヌビワもイヌビワコバチなしでは種子を作ることができない。つまり、両者は一いち蓮れん托たく生しょうである。このような関係は、「絶対送粉共生」と呼ばれ、いくつかの植物と昆虫の仲間で知られている。

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