日本学術会議 会長経験者が声明 “会員選考の政府案再考を”

東京, 2月15日, /AJMEDIA/

日本学術会議の組織のあり方をめぐって、政府が、会員を選ぶ際に第三者が関与する仕組みを導入することなどを盛り込んだ法改正の方針を示していることについて、学術会議の会長経験者5人が共同で声明を発表し「政府案は、会員選考に不可欠な自律性を保障するために採用された選考方法を毀損するものでしかない」などとして、岸田総理大臣に対し、法改正を伴う政府の改革を再考するよう求めました。

声明を出したのは、いずれも日本学術会議の会長経験者で、東京大学元総長の吉川弘之さん、政策研究大学院大学名誉教授の黒川清さん、東京大学名誉教授の廣渡清吾さん、東京大学名誉教授の大西隆さん、京都大学の前の学長の山極壽一さんの5人です。

日本学術会議をめぐって、政府は、組織の透明性を高めるため会員を選ぶ際に第三者が関与する仕組みを導入することなどを盛り込んだ「日本学術会議法」の改正案を開会中の通常国会に提出する方針です。

これについて、学術会議の会長を務めた5人は、岸田総理大臣に対し、法改正を伴う政府の改革を再考するよう求める声明を発表。

声明の中では、「学術会議が行う政府への科学的助言は政府の利害から学術的に独立に、自主的に行われるべきものだ」としたうえで、「政府案は、会員選考に不可欠な自律性を保障するために採用された選考方法を毀損するものでしかない」などとしています。

政府の方針をめぐっては、去年12月、学術会議も政府に再考を求める声明を取りまとめ、第三者委員会による会員選考への関与は、当時の菅総理大臣が、6人の会員候補を任命しなかったことの正統化につながりかねないなどとして「学術会議の独立性に照らしても疑義がある」などと指摘しています。

会長経験者5人の考えは
日本学術会議の会長経験者5人は共同で声明を発表するとともに、都内で会見を開いてそれぞれの考えを述べました。

5人のうち、体調不良で会見を欠席した東京大学元総長の吉川弘之さんはコメントを寄せ、「現在の日本学術会議の置かれた状況は日本の科学の健全な発展を壊す可能性があり、多くの科学者がこの状況に危機感を抱いている。十分な対話が準備されておらず政府が法案を通す予定のみ知らされるというような状況で日本の将来にとって極めて大きな社会的障害をもたらす要因となるおそれがある」としています。

会見に出席した政策研究大学院大学名誉教授の黒川清さんは、「世界と比較し、日本の歴史と哲学がどのように変わってきたのか知ることが大事であり、その上で学術会議が一体何なのかということをまず考える必要がある」と述べました。

会見に出席した東京大学名誉教授の廣渡清吾さんは、「今回の政府案による会員の選考方法は常識から外れており、いかなる意味でも学術会議をよくするものになっていない。学術会議がこれまで積み重ねてきた国際的な地位を瓦解させるものであり、国民に対する責任も果たすことができない」と述べました。

会見に出席した東京大学名誉教授の大西隆さんは、「政府の第三者委員会ができて、学術会議に関与が生じると、独立性が疑われることになり、アカデミーとして果たして今までのように海外から評価を受けることができるか危うい」と述べました。

京都大学の前の学長の山極壽一さんはオンラインで会見に出席し、「日本学術会議の会員任命拒否の事例を踏襲すれば、人事や組織の運営は、これからますます政府の方針に従わされることになる。権力が理由を述べずに命令を下すことがまかり通る社会が民主主義から遠ざかっていくのは必定で、組織や会員選考について改革を要求する政府案は明らかに間違いだ」と述べました。

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