“重力波”検出目指す「KAGRA」計画 2年延長 3年ぶりに観測へ

東京, 2月3日, /AJMEDIA/

ブラックホールの合体などで生じる時空のゆがみ「重力波」を検出することで宇宙の謎の解明を目指す施設「KAGRA」は、これまで十分な感度を得られず「重力波」を捉えられていません。この「KAGRA」について、当初今年度までだった計画の2年間の延長が国から認められ、来年度3年ぶりに観測を行うことがわかりました。

「KAGRA」とは
「KAGRA」は東京大学が中心となり164億円をかけて岐阜県の鉱山の地下に建設された大型観測施設で、巨大な質量を持つブラックホールや中性子星が合体する際などに生じるわずかな時空のゆがみ「重力波」を捉え、さまざまな元素が宇宙にもたらされた起源の解明などを目指しています。

国の大型プロジェクトとして計画され、2020年には海外の研究機関とともに初めて観測を行いましたが、これまで十分に感度を高められず「重力波」は捉えられていません。
ことし5月から3年ぶりに観測
ノーベル物理学賞の受賞者で研究代表を務める東京大学宇宙線研究所の梶田隆章教授が取材に応じ、新型コロナウイルスの影響で感度を高めるのに必要な装置の調整や観測が十分に行えなかったとしたうえで、ことし5月から3年ぶりに観測を行う見通しとなったことを明らかにしました。

観測は「重力波」を捉えた実績のある海外の施設と共同で行い、期間は1年半の予定で、対策を講じて来年春には感度をこれまでの10倍に高め、「重力波」の検出を目指すということです。

国の大型プロジェクトとしての期間は当初今年度まででしたが、新型コロナの影響が考慮され2年間の延長が認められたということです。

梶田教授は「感度を制限していた要因が分かってきたので、次の観測では最終的に『重力波』を捉えてもおかしくない感度を目指している。科学的な成果を出して、国民の皆さんの理解を得ていきたい」と話していました。
重力波 観測の歴史は
「重力波」は1916年にアインシュタインによって存在が予言されました。

それからおよそ100年後の2015年にアメリカの観測施設「LIGO」で直接捉えることに成功し、「重力波」の存在が確かめられ、研究チームのメンバー3人がノーベル物理学賞を受賞しました。

観測施設はヨーロッパにも「Virgo」があり、すでに「重力波」を検出しています。
日本で観測する意義は
海外が先行するなかで日本に「KAGRA」を建設し、観測する意義について研究代表を務める東京大学の梶田隆章教授は「重力波は1台だけでは信号がどちらから来たか分からない欠点があり、正確に決めようとすると、なるべく離れた場所にある3つ以上の装置が必要となる。アメリカとヨーロッパに加えて極東の日本にあることは重要な意味がある」と説明しています。

また「KAGRA」の心臓部にあたるサファイア製の鏡はマイナス253度まで冷やす新たな技術を用いて感度の向上を目指していて、次世代の装置開発に貢献する意義もあるということです。

国が延長を決めたことから「KAGRA」は2024年度までは予算が付く見通しですが、その後も計画を継続するには最終年度にあたる2年後に国の作業部会から評価を受ける必要があり、今後、期待される成果を出せるか正念場を迎えることになります。

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