月探査目指すNASAのロケット あす未明に打ち上げ 先月一度延期

東京, 9月4日, /AJMEDIA/

アポロ計画以来となる宇宙飛行士による月探査に向け、無人の宇宙船を搭載した大型ロケットが日本時間の4日未明、アメリカのケネディ宇宙センターから打ち上げられます。打ち上げは先月、一度、延期されていて、発射台での準備が進められています。

NASA=アメリカ航空宇宙局は日本やヨーロッパも参加する国際的な月探査計画「アルテミス計画」で2025年を目標に、アポロ計画以来となる宇宙飛行士による月面着陸を目指しています。

計画の第1段階として、日本時間の4日午前3時17分、アメリカ・フロリダ州のケネディ宇宙センターから大型ロケット「SLS」=「スペース・ローンチ・システム」の打ち上げが予定されています。

打ち上げは先月29日に予定されていましたが、カウントダウンの途中で一部のエンジンに不具合が見つかったことから延期されていました。

SLSは今回の計画に合わせて新たに開発されたロケットで、同じく新たに開発された宇宙船「オリオン」が無人の状態で搭載されています。

オリオンにはマネキンが3体載せられ、月を周回して再び地球に戻るおよそ40日間の試験飛行を行って衝撃や放射線の影響など、将来の有人飛行に向け必要なデータを集めます。

NASAによりますと、これまでのところ、打ち上げに向けた準備はおおむね順調に進んでいるということで、半世紀ぶりに月を目指す第一歩が踏み出せるか、注目が集まっています。

「アルテミス計画」とは
「アルテミス計画」は宇宙飛行士を再び月に送る計画で、アメリカが中心となって進め、日本やヨーロッパなども参加しています。

1960年代から70年代、人類を月面に送り込んだ「アポロ計画」と同様、ギリシャ神話にちなんで名付けられ、「アルテミス」は「アポロ」の双子の妹で、月の女神とされています。

計画ではまずは、3つの段階で月を目指します。

第1段階の今回は、新たに開発したロケットを使って同じく新たに開発した宇宙船「オリオン」を無人の状態で打ち上げ、月を周回する試験飛行を行います。

その後、第2段階として2024年を目標に実際に宇宙飛行士を乗せて月を周回する試験飛行を行い、第3段階として、2025年を目標に宇宙飛行士が月面に降り立つ計画です。
計画どおりに実現すれば1972年にアポロ17号が宇宙飛行士を乗せて月面に着陸して以来、およそ半世紀ぶりのこととなります。

さらにその先には月を周回する新しい宇宙ステーション「ゲートウェイ」を建設し、宇宙飛行士を定期的に送り込んで滞在できるようにする計画です。

この計画では、月を拠点として、2030年代には火星に有人着陸することも見据えています。

NASAは当初、2024年までに宇宙飛行士を月に降り立たせることを目指していましたが、ロケットの開発が遅れて打ち上げがずれ込んでいました。

今回の計画でNASAは初めての女性飛行士の月面着陸を目指すほか、日本人宇宙飛行士が月面に降り立つことも検討されています。
今回の試験飛行はマネキン使って実験
今回打ち上げられる宇宙船「オリオン」は「アルテミス計画」に合わせてNASA=アメリカ航空宇宙局などが開発しました。

打ち上げられたあと、月へ向かう軌道に乗って飛行し、打ち上げから12日後に、およそ45万キロ離れた月の裏側付近を通過して、再び地球に向かい、38日後に、太平洋に着水する計画です。
今回の試験飛行は、オリオンが問題なく、月を往復することができるか確かめるとともに、有人飛行に必要なさまざまなデータの計測が行われます。

その1つが3体のマネキンを使った実験です。

マネキンにはそれぞれ名前がつけられ、そのうちの1体「カンポス」は船長の席に設置され、振動や衝撃の大きさなどを計測します。
ほかの2体は「ヘルガ」と「ゾーハ」という名前で、今回、計画されている女性飛行士の月面着陸に向けて女性の体が飛行中に受ける放射線の影響を5000個以上のセンサーを使って調べます。

「ゾーハ」には放射線から人体を保護するベストが着せられ、その効果も確かめます。

また、オリオンが地球に帰還する際には表面温度がおよそ2800度に達すると予想され、オリオンの耐熱シールドがこうした高温に耐えられるか確かめるということです。
大型ロケット「SLS」 NASA開発のロケットで最も力強い
今回の打ち上げに使われる大型ロケット「SLS」はアルテミス計画のために開発されました。

全長およそ98メートルの2段式で、月を回る軌道に最大で27トンを打ち上げる能力があります。

「コアステージ」と呼ばれる1段目のロケットはスペースシャトルで使われたエンジンを改良して作られた、液体水素と液体酸素を使ったメインエンジンを4基、搭載しています。

NASAによりますと、前回、先月29日の打ち上げの際は、このうちの1基でうまく冷却できないトラブルが発生し、打ち上げ作業が中止されました。

NASAは作業の手順を変えることなどで対応できるとして、今回、再び打ち上げに挑戦することを決めています。

また、左右に2基ある補助ロケットは、スペースシャトルで使用された補助ロケットをもとに開発された固体燃料のロケットです。

そして「アッパーステージ」と呼ばれる2段目のロケットにはコアステージを切り離したあとのオリオンが宇宙空間で軌道を変えるエンジンが搭載されています。

NASAによりますと、SLSは打ち上げ時、アポロ計画で使われた大型ロケット「サターンV」よりも大きな推進力を出すことができるということで、「NASAが開発したロケットの中で最も力強い」としています。

SLSには複数のバリエーションが計画され、将来はさらに大きな推進力を持つロケットが使われる予定です。
打ち上げの手順は
NASAによりますと、大型ロケットSLSはおおむね次のような手順で打ち上げられます。

打ち上げの9時間40分前から天候や準備の状況についてブリーフィングが行われ、8時間40分前にこのあとの作業を進めるか判断を行います。

およそ7時間前からSLSに燃料となる液体水素や液体酸素を注入する作業を行います。

50分前には担当者たちが最終ブリーフィングを行います。

15分前、打ち上げの責任者は打ち上げ作業を進めるか、最終判断を行います。

10分前には最終的な打ち上げに向けたカウントダウンを始め、内部電源への切り替えなど最終調整を行います。

そして打ち上げの6秒前にコアステージのエンジンが点火されます。

そして、打ち上げられたあとは、およそ2分後に補助ロケットが切り離され、打ち上げからおよそ8分30秒後にコアステージが切り離されます。

その後、打ち上げからおよそ1時間半後にオリオンが月に向かう軌道に乗るようエンジンの噴射が行われ、およそ2時間後にオリオンがロケットから分離されます。

オリオンは月へ向かって飛行し、打ち上げから5日後には月に「最接近」します。

そして、月を周回したあと、打ち上げから32日後、地球に戻る軌道に乗ります。

最後は、打ち上げから38日後、アメリカ・サンディエゴ沖の太平洋に着水する計画です。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts