林伊佐緒さんが戦時中に録音か 未発表曲収録 レコード見つかる

東京, 6月2日, /AJMEDIA/

戦前から戦後にかけて数多くのヒット曲を生み出し、シンガーソングライターの草分けとしても知られた林伊佐緒さんが、戦時中に録音したとみられる未発表の曲が収録されたレコードが見つかりました。音楽史に詳しい専門家は「戦時中の音楽がどのような感覚で作られていたかが分かる貴重な作品だ」としています。

林伊佐緒さんは1934年に歌手としてデビューし、「ダンスパーティーの夜」など数々のヒット曲を世に送り出し、NHKの紅白歌合戦にも第1回から11回連続で出場したほか、作曲家としても数々の曲を手がけ、シンガーソングライターの草分けとして活躍し、1995年に亡くなりました。
今回見つかったのは、1944年12月に録音された「空の偵察員」というタイトルの発売前のテスト盤のレコードで、ことし4月、東京都内の骨とう市で、戦前の日本音楽を研究している高松敏典さんが入手しました。

「空の偵察員」は5番までの歌詞がある3分余りの曲で、魚雷を投下して攻撃する「雷撃機」に乗った偵察員が命懸けで任務に当たる決意や家族を思う心情などが歌われています。

作詞や作曲者の名前は記載されていませんが、録音された当時は第2次世界大戦の最中で、音楽家たちには国民の戦意を高める楽曲が求められ、林伊佐緒さんも「出征兵士を送る歌」など戦争をテーマとした楽曲を作曲していました。

林さんが所属したレコード会社によりますと、この楽曲が録音された記録はあるものの、一般向けに発売された記録は確認できていないということです。
この曲が発売されなかった理由について、音楽史研究家の郡修彦さんは「戦況が悪化し、レコードの生産自体が難しくなっていたことや、偵察員という歌の内容が、戦況にそぐわなくなっていたことも考えられる」と指摘しています。

そのうえで郡さんは「テスト盤は通常はスクラップにされることが多いので、保存されていたことは奇跡だと言える。当時どのような感覚で音楽が作られていたのかなど、歴史の記録として大変貴重なものだ」と話していました。

このニュースはNHKの「ニュースポスト」に寄せられた情報をもとに取材しました。

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