非常階段1カ所、全国に3万棟 火災現場ビル、逃げ場なく―専門家「犯罪考慮し法整備を」

東京, 12月26日, /AJMEDIA/

 大阪市北区の雑居ビル4階で起きた放火殺人事件は、25人もの犠牲者を出した。脱出口となる非常階段は火の手に阻まれ、全員が逃げ場のないフロア奥で発見された。総務省消防庁によると、直接外への避難が難しい地上3階以上で、非常階段が1カ所しかない商業ビルは、全国に約3万棟あるとみられる。専門家は「事件も考慮し、法整備すべきだ」と警鐘を鳴らす。
 不動産登記簿などによると、現場の「堂島北ビル」は1970年築の地上8階建てで、床面積は1~6階がいずれも約93平方メートル。出入り口は表通り側のエレベーターと非常階段各1カ所しかない。
 74年の改正建築基準法施行令で、6階以上の建物は2カ所以上の階段設置が義務付けられたが、現場ビルは改正前に建てられたため適用外で、排煙設備の設置義務もない。消防法上のスプリンクラー設置基準は延べ床面積が3000平方メートル以上となるため対象とならず、大阪市消防局の定期検査でも過去に不備は見つかっていない。
 現場周辺を視察した防災システム研究所の山村武彦所長は「脱出できそうな窓は表通り側にあったが、放火地点と近く避難に使うのは困難だったろう」と話す。周辺は建物が密集しており、「他に窓があったとしても逃げられなかった可能性が高い」と推測する。
 山村所長は、現行の建築基準法や消防法の防火対策について「失火などのミスが前提になっている」と指摘。「犯罪が起きることも考慮した法整備が必要。2方向避難ができない建物では(初期消火のための)簡易型のスプリンクラーを設置しておくべきだ」と提言する。
 消防庁は各地の消防に緊急点検を指示しており、国土交通省と共に再発防止を検討する考えだ。

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