被災古民家でカフェ開業 住民協力、憩いの場に―西日本豪雨・広島

東京, 7月7日, /AJMEDIA/

 2018年の西日本豪雨で被災し、土砂で埋まったままだった広島県・上蒲刈島(呉市蒲刈町)の古民家が昨年9月、カフェとして生まれ変わった。「思い出が詰まった『ばあちゃんの家』を何とかしたい」。孫娘が一人で始めた片付け作業を近くの住民が手伝ったことがきっかけで開店し、いまでは地域住民が集う憩いの場となっている。
 カフェを開いたのは、元保育士の上田咲さん(38)。瀬戸内海に浮かぶ上蒲刈島に近い別の島で生まれ育ち、祖母(90)の家は幼少期から幾度となく訪れた思い出の場所だった。
 4年前の西日本豪雨では土砂崩れの影響で、家の周辺で川の水があふれ、床上まで泥が堆積した。1人暮らしの祖母は離れに避難して無事だったが、家は手が付けられない状態となり、解体する方向となった。
 当時、沖縄県内のパン店で修行中だった上田さん。変わり果てた家の写真や映像を見て「本当に起こったこととは思えんかった」と振り返る。
 その後、上蒲刈島内の介護施設に入った祖母の代わりに離れに移り住むと、土砂に埋まったままの家が目に入った。「せめて土だけでも出そう」。保育士として働く傍ら、20年秋ごろから1人で片付け始めた。
 そんな上田さんの姿を見た近所の人が、少しずつ作業を手伝ってくれるようになった。島では、近所で困っている人がいたら力を貸すという意味の「合力(こうろく)」という言葉がある。今村一彦さん(69)は「小さいころから島の大人たちが合力する姿を見てきた自分にとって、手伝い始めたのは自然なこと」と笑顔を見せる。
 作業の合間にお茶やお菓子を囲んでいると、「こうやって集える場所になったらいいね」との声が上がった。そこで、上田さんはカフェへの改修を決し、約1年がかりで開店にこぎ着けた。手伝ってくれた人たちの「手と手が重なってできた」との意味を込め、「tete&tete(テテ・アンド・テテ)」と名付けた。
 オープンから約9カ月。近所の人が野菜や果物を持って顔を出してくれるほか、島外からのお客さんも多いという。上田さんは「西日本豪雨をはじめ、生きていたらいいことばかりではないけれど、来てくれた人が癒やされて、少しでも前に進んでみようと思ってもらえる場所になったら」とほほ笑む。

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