軍事力強化で米の歩み寄り狙う 北朝鮮、非核化交渉応じず―礒崎慶応大教授・米朝会談5年

東京, 6月11日, /AJMEDIA/

北朝鮮は2018年の初の米朝首脳会談で約束した「非核化への取り組み」を無視し、核・ミサイル開発にまい進している。礒崎敦仁慶応大教授(北朝鮮政治)は時事通信のインタビューで、非核化交渉再開は「非常に困難だ」と指摘。翌19年の首脳会談失敗を受け、北朝鮮は軍事力を強化し、米国の歩み寄りを長期的な視点で目指しているとみる。主な発言は次の通り。
 ―米朝会談をどう評価するか。
 会談のあった18年の1年間、核・ミサイル実験が一度もなかった事実に注目すべきだ。金正恩朝鮮労働党総書記は、米国からの攻撃を一時的に避けるためのパフォーマンスで会談したのではない。最後まで非核化するかは別にして、米国から安全の保証や経済制裁解除などの譲歩を得る交渉をするつもりだった。北朝鮮はまず実験停止の見返りを求めたが、トランプ大統領(当時)は応じなかった。
 ―非核化交渉の行方は。
 北朝鮮メディアで非核化の論調は一切なくなった。もともと難しかった非核化交渉は、極めて困難になった。首脳会談の失敗で、正恩氏は米国から譲歩を得るには、もっと強くなる必要があると判断した。抑止力、軍事力を強化し続ければ、次の政権か次の次か分からないが、いつか米国が北朝鮮を無視できなくなるという長期的戦略だ。交渉に意欲的でないバイデン政権から譲歩を引き出せるとは思っておらず、今は対話の時ではないとみている。
 ―米朝の代わりに日朝対話が進む可能性は。
 北朝鮮は対話を求める岸田文雄首相の発言に「両国が会えない理由はない」と反応し、岸田政権に探りを入れた。これまでの「日本研究所研究員」の対日談話などでなく、外務次官が声明を出した点は注目される。ただ、拉致問題は解決済みという原則は変わっていない。また、日米韓はがっちりと連携しており、日本だけが思い切った対話に動くことは考えにくい。
 ―北朝鮮のロシア寄りの姿勢の背景は。
 ウクライナの親ロ派地域の独立承認など北朝鮮がロシアに接近するのは、中国に対するカウンターバランス(均衡を取る相手)としてだ。今後、核実験を行った場合に、中国が17年のように国連安保理の制裁決議に賛成したとしても、ロシアが拒否権を行使することを望んでいる。貿易額は低く、経済的に対ロ関係の強化は意味がない。

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