裁判長が突如「国代理人」 交流人事で法務省訟務局長に―「独立・公平害す」と弁護士ら

東京, 11月6日, /AJMEDIA/

 東京地裁行政部の部総括判事だった春名茂氏が9月に法務省訟務局長に直接転じた同省と最高裁の交流人事が、物議を醸している。訟務局長は国の代理人を務める「訟務検事」を統括する立場。裁判官は憲法で身分保障され、三権分立の一角を担うだけに、訴訟の原告弁護団から「裁判所の独立、裁判の公平に悪影響を及ぼす恐れがある」との批判が上がっている。
 裁判所と法務省の交流人事は「判検交流」と呼ばれ、以前から問題視されてきた。行政部の部総括経験者が訟務局長に就任したケースは過去にも2例あるが、いずれも間に別のポストを挟んでいた。弁護士有志が10月31日、「評議内容を訟務局長が知る異常な事態で、被告企業の法務部長に裁判官が天下りしたようなものだ」として、法相や最高裁長官に抗議するとともに交流人事の廃止を申し入れた。
 抗議した1人、小島延夫弁護士は横須賀石炭火力発電所の環境影響評価(アセスメント)を巡る訴訟の弁護団長を務める。春名裁判長の下、原告市民の尋問を経て結審し、11月判決の予定だったが、異動後に「弁論を再開したい」との連絡を受けた。
 小島氏は「国の代理人が判決を出すことになるため、弁論再開に応じた。新しい裁判長は記録だけ読んで判決を出す。公正な判決が下されるのかと、原告は強い憤りを感じている」と語った。
 子どもの認知を求めた同性カップルの訴訟で原告代理人を務める仲岡しゅん弁護士も「訴訟当事者を無視していて、裁判の公平性を害するような異動だ」と批判した。
 小島氏らの抗議文に316人の弁護士や35の訴訟弁護団なども賛同し名を連ねた。法務省訟務局は「職務の中立・公正な遂行に疑念を抱かれることのないよう適切に対応している」とする。ジャーナリスト安田純平さんの旅券発給を求めた訴訟を担当する鈴木雅子弁護士は「国側の尋問の人選が大詰めとなった中での異動だった。訟務局長の職務を果たそうとすれば裁判の公平性を害し、公平性を保とうとすれば職務が果たせない、相反するような人事だ」と指摘した。

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