アルツハイマー病治療薬 きょう承認審査 日米製薬会社が開発

東京, 12月22日, /AJMEDIA/

アメリカと日本の製薬会社が共同で開発したアルツハイマー病の治療薬について、厚生労働省が、22日、承認すべきかどうか審査を行います。

会社側は病気の進行自体を抑える世界で初めての薬だとしていますが、国際的に有効性の評価は分かれていて、厚生労働省の部会がどう評価するかが焦点です。

審査が行われるのは、アメリカの製薬会社「バイオジェン」と、日本の「エーザイ」が開発した「アデュカヌマブ」です。

アルツハイマー病の進行を抑える薬として去年12月に承認の申請が行われ、22日午後に開かれる厚生労働省の専門家部会で承認すべきかどうか判断されることになっています。

脳にたまった「アミロイドβ」という異常なたんぱく質を取り除いて神経細胞が壊れるのを防ぐ効果があるとされ、製薬会社によりますと、アルツハイマー病の初期の患者などを対象にした国際的な治験では認知機能の低下が22%抑えられたということです。

会社によりますと、これまで症状の進行を数年程度遅らせる薬はありましたが、病気の進行自体を抑える薬は、世界でも初めてだとしています。

「アデュカヌマブ」は、アメリカのFDA=食品医薬品局がことし6月に条件付きで承認した一方、EMA=ヨーロッパ医薬品庁が先週17日、「アミロイドβは減らすものの、症状の改善との関係は立証されていない」などとして承認をしないよう勧告していて厚生労働省の部会が有効性をどう評価するかが焦点です。

国内の認知症の人は600万人と推計され、このうちアルツハイマー病の人は6割から7割に上ると見られています。

「アデュカヌマブ」とは
「アデュカヌマブ」は日本の「エーザイ」とアメリカの製薬会社「バイオジェン」がアルツハイマー病の治療薬として開発しました。

アルツハイマー病は、発症の10年以上前から脳の中に「アミロイドβ」と呼ばれる異常なたんぱく質がたまり始め、これによって神経細胞が壊れていくことが原因だと考えられています。

「アデュカヌマブ」は人工的に作られた抗体で、この「アミロイドβ」を取り除くことで神経細胞が壊れるのを防いでアルツハイマー病の進行そのものを抑える効果が期待されています。

ただ、一度壊れてしまった神経細胞を回復させることはできないため、▽認知症を発症する前の「MCI=軽度認知障害」や▽アルツハイマー病の初期の状態など、早期に治療を始めることが重要だとされています。
治験の結果は
「アデュカヌマブ」については、薬の効果や安全性を確認するため、最終段階の「治験」として2つの臨床試験が行われました。

2つの治験はアメリカや日本など国際的に実施され、認知症の前段階とされる「MCI=軽度認知障害」と軽度のアルツハイマー型認知症の人を対象にそれぞれおよそ1600人が参加しました。

治験では「アデュカヌマブ」を▽少ない量で投与するグループと▽多い量で投与するグループ、それに▽偽の薬を投与するグループに分け、月に1回、1年半にわたって投与して、認知機能の変化などを調べました。

しかし、中間解析の段階で、有効性を確認するのは難しいという結果となり、おととし(2019年)治験は途中で中止となりました。

しかし、会社によりますと、その後、得られたデータを含めて「アデュカヌマブ」の投与量と症状の変化などを詳細に解析したところ、2つの治験のうち一方で、認知機能の低下が22%抑えられたという結果が出たということです。

もう一方の治験では、全体としては認知機能の低下を抑える効果は確認できなかったということですが、会社では一定量以上投与した人のデータを詳細に解析すると、有効性があるという結果が出た治験と同様の傾向がみられたとしています。

また、2つの治験では脳の中の「アミロイドβ」が、59%から71%、減少していることが確認されたということです。

副作用については、多い量の薬を投与した人の41%に、MRIの検査で脳の腫れや小さな出血が報告されました。

このうちの多くは無症状でしたが、頭痛などの症状が出た人もいたということです。
アルツハイマー病と治療
認知症はさまざまな病気により起こることが分かっています。

原因として最も多いのはアルツハイマー病で、全体の60%から70%を占めるとみられています。

アルツハイマー病は、ドイツの医師、アロイス・アルツハイマーが100年以上前に初めて報告した病気です。

アルツハイマー病では脳の中に異常なたんぱく質、「アミロイドβ」が症状が出る10年以上前から徐々にたまることが知られていてこれにより神経細胞が壊れて認知機能が低下すると考えられていますが、詳しいメカニズムはまだはっきりとは分かっていません。

これまでのアルツハイマー病の治療薬は、残った神経細胞の働きを高めるなどして、症状が進むのを数年程度遅らせますが、脳の神経細胞が壊れていくこと自体を止めることはできませんでした。

このためアルツハイマー病の進行自体を抑えることができる根本的な治療薬の開発が待ち望まれています。
海外では対応の差も
「アデュカヌマブ」をめぐってはアメリカとEU=ヨーロッパ連合では対応に差が出ています。

このうち、アメリカ・FDA=食品医薬品局はことし6月、深刻な病気の患者に早期に治療を提供するための「迅速承認」という仕組みで「アデュカヌマブ」を承認しました。

外部の専門家委員会は承認に否定的な結論をまとめていましたが、FDAでは「治験の結果、アミロイドβの減少が確認され、患者の症状への効果が合理的に予測される」などとしました。

ただ、「迅速承認」であるため追加の臨床試験を行って効果を検証する必要があり、その結果、効果が認められない場合には承認が取り消されることもあるということです。

会社では来年3月以降、およそ4年間かけて追加の臨床試験を行う予定だということです。

一方、EUの医薬品規制当局、EMA=ヨーロッパ医薬品庁は今月17日、「アデュカヌマブ」について、EUの執行機関に承認しないよう勧告しました。

理由についてEMAは「この薬は脳の中のアミロイドβは減らすものの、症状の改善との関係は立証されていない。全体としてはアルツハイマー病の治療に効果があると示されていない」などとしています。

日本では、「アデュカヌマブ」について、今月22日に厚生労働省の専門家部会で承認すべきかどうか審査することになっています。
認知症と将来の推計
厚生労働省によりますと、国内で65歳以上の認知症の人は600万人以上と推計されていて、2025年にはおよそ700万人、高齢者の5人に1人ほどが認知症になると予測されています。

また、WHO=世界保健機関によりますと、世界中に認知症の人は5500万人以上と推計されていて、2050年には1億3900万人に増加すると予想されています。

認知症は日本だけでなく、世界共通の課題となっています。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts