近代文学代表する作家・詩人 佐藤春夫 “直筆の草稿”見つかる

東京, 7月31日, /AJMEDIA/

近代文学を代表する作家で詩人の佐藤春夫が学生時代に書いて文芸誌に掲載された詩の直筆の草稿が見つかりました。専門家は「文学を志す若者だった佐藤の自負がうかがえる貴重な資料だ」としています。

見つかったのは佐藤が1918年に小説「田園の憂鬱」でデビューする前に文芸誌に掲載された「同時代私議」という詩の直筆の草稿です。

佐藤の遺族が保管していた資料の調査を行った東京大学の河野龍也 准教授が、佐藤が慶應義塾大学在学中だった1912年に和歌山県の父親に送った手紙の中に同封されていたのを見つけました。

「同時代私議」は明治天皇に殉じてみずから命を絶った軍人の乃木希典をテーマにした詩で殉死という行動に対する複雑な心情を表現したとされています。

草稿は、同じタイトルですが、評論の文体で書かれていて、乃木の死を、信念を貫くための行動だったと率直に評価したうえで「国士乃木大将の殉死に就いて異常なる興味を感ずることの出来る、私自身の性格に感謝する」と、感銘にも似た思いを抱いていたことをうかがわせる記述がみられます。
殉死を賛美していると受け取られないために、詩という形に書き直した可能性があるということで、河野 准教授は「デビュー前の佐藤春夫は謎に包まれており、直筆の資料は非常に貴重だ。新しい価値観を打ち立てなければという信念を持って文学を志した若き日の佐藤の自負みたいなものがうかがえる」と話していました。

見つかった草稿はことし9月に実践女子大学で開かれる企画展で公開される予定です。

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