福島第一原発事故から13年“最長40年で廃炉”計画に不透明さも

東京, 03月11日 /AJMEDIA/

世界最悪レベルとなった、東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から13年。懸案となっていた処理水の放出が始まった一方、溶け落ちた「核燃料デブリ」の取り出しをはじめ、ほとんどの工程が延期を余儀なくされていて、最長40年で廃炉を終える計画は不透明さを増しています。

福島第一原発では、13年前の東日本大震災の巨大地震と津波の影響で電源が失われ、運転中だった3基の原子炉で核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が発生、大量の放射性物質が放出されました。

1号機から3号機で溶け落ちた核燃料が周りの構造物と混ざり合った「核燃料デブリ」はあわせておよそ880トンにのぼると推計され、冷却に使う水や地下水などが汚染水となって増え続けています。

この汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含む処理水は1000基余りのタンクに保管され、処分が懸案となってきましたが、東京電力は、去年8月、政府の方針に従い、基準を下回る濃度に薄めた上で海への放出を始めました。

ただ、反発した中国による日本産水産物の輸入停止措置は、半年余りたったいまも続いていて、影響は長期化しています。

また汚染水を処理する過程では、去年10月に放射性物質を含む廃液を浴びた作業員が一時入院したほか、先月7日にも浄化装置から放射性物質を含む水が漏れるトラブルがあり、地元の福島県などからは東京電力の安全管理に厳しい目が向けられています。

一方、廃炉最大の難関とされる「核燃料デブリ」の取り出しをめぐっては、今年度末までに2号機で試験的な取り出しに着手する計画でしたが、装置の投入が進まずに、ことし1月に断念しました。

改めてことし10月までの開始を目指していますが、取り出し開始の延期は3回目で、当初の計画から3年近く遅れることになります。

また、3号機で始めるとしている本格的な取り出しは開始できる見通しも立たない中、今月8日、国の専門機関が、本格的な取り出し向けて原子炉などに充填(じゅうてん)剤を流し込んでデブリごと固めて取り出す新たな工法を一部で活用するよう提言しました。

東京電力は、今後1年から2年ほどかけて実現性などを検証するとしていますが、提言をまとめた前の原子力規制委員会委員長、更田豊志さんは「廃炉全体のロードマップを考えるといつまでも手をこまねいているわけにもいかないので、一つの転機となるよう提言させてもらった」と話すなど、最長40年で廃炉を終える計画は不透明さを増しています。

汚染水処理でトラブルも 地元住民「すごく残念」
汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含む処理水について、政府は「廃炉を前に進めるために処分は避けて通れない」として大量の海水と混ぜて基準を下回る濃度に薄めたうえで海へ放出する方針を決め、去年8月から海洋放出が始まりました。

風評被害を懸念する漁業者などが強く反対する中、政府は安全性の確保や風評対策に一定の理解を得たとして放出に踏み切りましたが、その後、半年余りの間にも汚染水を処理する作業でトラブルが相次いでいます。

去年10月には汚染水の処理設備で配管の洗浄中にホースが外れ、作業員に放射性物質を含む廃液がかかり、皮膚に汚染が確認された男性2人が一時、入院しました。

また先月7日には、別の浄化装置で、一部の配管の弁が開いた状態になっているのを作業員が見落としたまま水を通す作業を行い、放射性物質を含む水が屋外に漏れ出しました。

いずれも放射性物質による原発の外部への影響は確認されていないとしていますが、地元の福島県の住民からは「トラブルが頻繁していて安心できる状況になっていない」とか「処理水の海洋放出について世界からも注目や監視の目がある中ですごく残念だ」などと、不安や懸念の声があがっています。

廃炉のロードマップ 現状は【詳しく】
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は、事故から40年となる2051年までの完了を目指して作業が続いていますが、最大の難関とされる溶け落ちた「核燃料デブリ」の取り出しを始め、ほとんどの工程が当初の計画から遅れていて、計画どおりに廃炉を終えられるかは不透明さを増しています。

政府と東京電力は、福島第一原発の事故が起きた2011年に、▽原子炉建屋で発生する汚染水への対策、▽建屋に残る使用済み核燃料の搬出や保管、▽溶け落ちた核燃料が周りの構造物と混ざり合った「核燃料デブリ」の取り出しといった取り組みを段階的に進め、30年から40年で廃炉を完了するとしたロードマップを定めました。

このうち汚染水への対策では、当初、発生量をゼロにすることを目指しましたが、建屋の損傷が想定以上に激しかったことなどから雨水や地下水の流入を止められず、いまも1日およそ90トンのペースで発生しています。

敷地内では汚染水から放射性物質の大半を取り除いた処理水をためるタンクが増え続け、政府は、このままため続けることはできないとして、去年8月、処理水に大量の海水を混ぜて基準を下回る濃度に薄めた上で、海への放出を始めました。

また原子炉建屋の最上階のプールに残された使用済み核燃料は、1号機と2号機にあわせて1000体余りが残されたままで、保管施設への搬出完了の目標は当初の計画から10年遅れた2031年となっています。

一方、1号機から3号機で溶け落ちた「核燃料デブリ」はあわせておよそ880トンにのぼると推計され、2021年までに取り出しを始める計画でした。

しかし、2号機で予定している試験的な取り出しは装置の投入が進まず延期を繰り返していて、3号機で始めるとしている本格的な取り出しはその工法も決まらず、開始できる見通しは立っていません。

こうした中、今月8日には、国の専門機関が本格的な取り出し向けて、原子炉などに充填剤を流し込んでデブリごと固めて取り出す新たな工法を一部で活用するよう提言し、東京電力は今後1年から2年ほどかけて実現可能性の検証などを進めるとしています。

主な工程のほとんどが見直しや延期を余儀なくされ、廃炉のロードマップは2019年までに5回改訂されました。

最長40年で廃炉を終える計画の実現は不透明さを増していますが、政府と東京電力は今のところ目標を堅持する姿勢です。

東京電力福島第一廃炉推進カンパニーの小野明代表は、NHKのインタビューに対し「最長40年の目標は今の時点で見直す必要はなく、まだ見直しを議論するだけの材料もそろっていない。廃炉は放射性物質によるリスクを安全かつ着実に、いかに早く下げるかが重要で、いろいろな作業が錯そうする中、優先順位を決めて取り組んできたのが実情だ。目標を持たないと、廃炉に向けては足がすくんでしまう懸念もあるので、30年から40年という目標は大きな意味がある」と話しています。

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