アマゾンの家庭用ロボ「Astro」レビュー:高価な玩具か、動き回る「Alexa」か

東京, 4月21日, /AJMEDIA

 Amazonの新しい家庭用ロボット「Astro」が、招待制で1000ドル(約13万円)で発売されている。私はレビュー用に1~2週間試す機会を得た。さて、この、セキュリティデバイスでもあり、動き回る車輪付き「Amazon Echo」でもあり、子ども向けの疑似ペットでもあり、モバイル動画ストリーミングデバイスでもあり、(周辺機器を追加すれば)犬用自動給餌マシンにもなる多才なロボットをどうレビューしたものか。

 今のところ、Astroの遊び心のあるパーソナリティーには感銘を受けたが、その機能は玉石混交で、価格相応だと思える機能は見つかっていない。

 クールで革新的だとは思うが、重要かというと、どうだろう。まだ自分で買おうとは思わない。

Astroの歩き方
 Astroの移動方法は、最新の掃除ロボットと同様に、自己位置推定(V-SLAM)システムのための多数のセンサーとレンズを採用したものだ。だが、Astroが動き回る目的は、掃除ロボットとは異なる。

 「Astroには、ちょうど良い歩行速度で優雅に家の中を動き回ってほしかった。だから、掃除ロボット用の一般的なSLAMシステムと障害物回避システムでは不十分だった。掃除ロボットは非常に動きが遅いし、物体にぶつかろうとするものだ」と、Astroのプリンシパルプロダクトマネージャー、Anthony Robson氏は私に語った。

 つまり、Astroのチームは「振り出しに戻って」、新しい一連のニーズを念頭に、新たな移動システムを考え直さなければならなかったという。

 AmazonのチームがAstroの移動システムで注力したことは明確だ。Astroは快調な時、自信を持って家中を歩き回り、分厚い絨毯も問題なく乗り越える。

 だが、Astroは完璧ではない。米CNETが保有するスマートホームの1階をマッピングするのに、2度失敗した。Amazonの担当者と何度か電話した結果、どうやら複数の原因があることが分かった。木の床の反射やAstroのドッキングステーションを窓の近くに置いたことで、Astroが自分の位置を把握する能力が妨げられ、リビングにむき出しの状態で存在する階段がマッピングを混乱させていた。

 こうした障害を乗り越えるために、窓を閉め、階段をダンボール紙で覆った。これでAstroは1階のマッピングに成功した。

 家の中のマッピングに成功したら、Astroを連れてすべての部屋を案内し、各部屋で止まってその部屋の名前を告げる。アプリで少し修正する必要はあったが、Astroはほとんどの部屋をちゃんとマッピングした。家中をマッピングして以来、部屋から部屋への移動はかなりうまくできている。幾つかのドアを閉めて他の部屋への新しいルートを開拓させてみたところ、Astroはかなりの確率で新しいルートを見つけて目的地に到達した。

 だが、Astroはまだ時々迷子になる。もっとイライラするのは、Astroは常に自分の前後に5フィート(約150cm)の空間を確保することが推奨されており、狭い廊下で立ち往生することがある。米CNETのスマートホームにあるキッチンはU字型のレイアウトでその中央に大きなカウンターがあるのだが、Astroはここで頻繁に動けなくなる。冷蔵庫や食器棚を使いたいときに、Astroに後退するか横に移動するよう命令しても、ほとんど言うことをきかない。

 Astroが家の中をマッピングした後、アプリを使って任意の部屋をブロックできる。そうすると、Astroは(たとえばトイレなどに)付いてこなくなる。今のところ、この機能はうまく作動しているようだ。さらに、Amazonによると、家で過ごす時間が長くなるにつれてAstroはうまく移動できるようになるそうだ。また、アップデートによっても改善していくという。

Astroの(多様な)パーソナリティー
 今のところ私がAstroの機能で本当に気に入っているのは、遊び心のある非言語的な“パーソナリティー”だ。AmazonがAlexaなどの音声アシスタントにある「不気味の谷」から離れ、Astroをよりペットに近い製品にしたことを評価したい。その結果、子どもにも大人にも楽しいものになった。

 その点で、Astroの表情豊かな目とやさしいビープ音やゴロゴロ音は決定的だ。Astroが鶏やビートボックスの真似をしたり、映画「グレムリン」に登場するモグワイのような変な声で歌うと、皮肉屋の同僚も笑っていた。

 それでも、言葉での応答が必要な質問をした際にはAstroはAlexaの声で応えるので、奇妙な感じがする。その場合、スマートスピーカーよりもっと不似合いな、キッチンを動き回っている愛嬌のあるロボットからいつものAlexaの声の応答が聞こえることになる。

 そのせいで、私は今のところ2つの問題を抱えている。まず、ウェイクワードとして「Astro」を使う場合、私は大抵はより遊び心のあるパーソナリティーを呼び起こそうとする。だから、「Astro、豚の真似をして」と命令し、それを見て子どもたちが喜ぶとうれしい。だが、「Astro、猫の真似をして」と命令したのにAlexaの声で「猫の鳴き声の新しいスキルを開始します」と言われると、子どもたちはがっかりしてしまう。

 開発に何年もかかっているのに、Alexaの声はAstroのビープやゴロゴロより冷たくて人工的だ。George Lucas監督が数十年前に「R2-D2」(映画「スター・ウォーズ」に登場するキャラクター)で予想した通りだ。つまり、私はAstroにおけるAlexaの存在感をもっと少なくしてほしい。

 次に、AstroはAmazonのEchoシリーズよりも聞き取りが下手なようだ。4、5人いる同僚の編集者や動画制作者がAstroと交流しているのだが、質問や命令を通常より多く繰り返している。子どもたちの場合はもっと顕著で、Echoデバイスからは確実に答えてもらえるのに、Astroから答えを得るには当たり外れがある。

 私は、Astroの周囲の音響変化の影響だと見ている。スマートスピーカーは大抵、静止した状態で効果的に聞き取る方法を学ぶよう設計されているからだ。動かないEchoシリーズによって設定された水準がいくら高くても、動き回るAstroには役に立たない。

私にとってAstroに足りないものは何か
 これらの問題点はあっても、Astroの総合的な印象は良い。だが、幾つか心配な点がある。実際のところ、家でどの程度役に立つだろうか。私の家族は音楽のストリーミングにほぼ必ずAlexaを使っており、時刻や天気を尋ねることもある。同じ機能で動き回るバージョンを手に入れるために1000ドル(早期購入期間が終われば1500ドル、約19万円になる)支払うという価値提案には疑問を感じる。つまり、Astroは本当に家で役に立つのだろうか。

 もっと真面目な話、プライバシーの問題もある。最近、別のカメラメーカーが屋内カメラのビデオセキュリティに関する大論争を巻き起こした。私は引き続き、屋内防犯カメラを使わないか、使うのであれば厳しい制限を設定することをお勧めする。

 AmazonのAstroは、うちの4歳と6歳の息子の顔の高さまで伸びる2台の潜望鏡を含む3台のカメラを搭載する。これらのカメラと、Astroが収集する屋内のレイアウトデータのことを考えると私は心配になる。Astroのセキュリティとプライバシー対策についてより良いアイデアを得るために、Amazonのホワイトペーパーを熟読し、関連機能を担当するAmazonの担当者にインタビューする予定だ。

 それまでは推測で結論を出そうとは思わない。だが、ホワイトペーパーとインタビューの結果がどうであれ、自宅にカメラを増やすのは恐ろしいテクノロジートレンドの流れだと感じる。一見したところ、Astroには既に多くの家庭に設置されている安全ではないネット接続カメラよりも強いプライバシー対策が施されているようではある。

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