認知症の課題解決を「音で」目指す塩野義製薬とPxDT–共創で得た「3つの学び」を紹介

東京, 04月30日 /AJMEDIA/

 CNET Japanでは、2月19日から3月1日にかけて、「1+1=2以上の力を生み出す『コラボ力』」をテーマに掲げたカンファレンス「CNET Japan Live 2024」を開催した。

 2日目のセッションでは、塩野義製薬と共同で音を使った認知症の予防・改善に取り組んでいるピクシーダストテクノロジーズ(以下、PxDT)が登場。同社のkikippa事業部 兼 iwasemi事業部・事業部長 辻未津高氏が、「オープンイノベーションにおけるピクシーダストテクノロジーズと塩野義製薬の事例」と題して、自らの経験を踏まえた大企業・スタートアップ共創のポイントについて語った。

音や光の波をコンピューターで制御する「波動制御」で社会課題を解決
 PxDTは2017年設立のスタートアップで、音や光の波をコンピューターで制御する「波動制御」を活用した複数の技術を有し、「パーソナルケア&ダイバーシティ」と「ワークスペース&DX」の領域で事業を展開している。エンジニアでメディアアーティストとしても活躍する落合陽一氏が代表取締役会長CEOを務め、2023年8月に米国のナスダック市場に上場を果たしている。

 辻氏は、「我々は、『社会的意義』や『意味』があるものを連続的に生み出す“孵卵器”となることを目指しており、認知症のような大きな課題に対して取り組むことを得意としている。その際には、今までになかったアプローチを用いて、様々な企業と組みながら連続的に商品を届けていくことに挑戦している」と、同社の理念を説明している。

通常の生活をしながら認知症をケアする技術を共同開発
 そのような活動の一環として、同社は現在、塩野義製薬と共に「ガンマ波サウンド」を活用した認知症問題に取り組んでいる。

 厚生労働省によると、2025年に日本の65歳以上の認知症想定患者数は5人に1人にのぼるとされているが、現在は解決策がない状態にある。一方、最新の研究では、アルツハイマー型認知症患者は、脳波の一部であるガンマ波が弱まっていることが明らかとなり、これまでに実際に音や光を使った感覚刺激によってガンマ波を引き起こすことで、認知機能や認知症に関連する機能悪化の抑制を示唆するという研究結果が得られているという。

 その中でPxDTと塩野義製薬は、日常に溶け込む形でガンマ波を引き起こすことに成功。「様々な場所で、音によって認知機能をケアできる世界に変えていける技術を両社で開発した」(辻氏)。具体的には、テレビを見ている時や音楽を聴いている時の音声情報をリアルタイムに40Hzに変調し、ガンマ波をひき起こす音に変えることができる技術だ。少しざらざらした音になるが、問題なく音声情報も聞き取れ、音楽も楽しむことができるという。辻氏は、「この音声変換技術を使って、誰もが生活をしながら自然と認知機能ケアができる未来を作っていきたい」との希望を語る。実装形態としては、イヤホンやテレビスピーカーなどのデバイス、番組の副音声やラジオコンテンツなどを想定しているそうだ。

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