「曽我廼家」継承 松竹新喜劇の3人が描く未来

東京, 11月07日, /AJMEDIA/

今年結成73年を数える上方人情喜劇の老舗劇団「松竹新喜劇」。大阪・道頓堀の松竹座で6日に幕を開けた錦秋公演で、喜劇のルーツにその名を残す「曽我廼家(そがのや)」の名跡を、3人の若手劇団員が継承した。道頓堀で喜劇が生まれて100年あまり。3人は「改名を機にさらに、上方喜劇を追求していきたい」と語る。

ルーツは明治時代
継承したのは植栗(うえくり)芳樹=平成19年入団▽桑野藍香(あいか)=25年入団▽竹本真之=29年入団-の3人。それぞれ曽我廼家一蝶(いっちょう)、曽我廼家いろは、曽我廼家桃太郎を名乗ることになった。

「曽我廼家」のルーツは明治時代の上方の喜劇役者、曽我廼家五郎、曽我廼家十郎で、上方歌舞伎にいた2人は笑う芝居を志して歌舞伎界を飛び出し、当時の世相や人間の情を笑いにまぶして描いた新しい喜劇を創造する。第一弾が、当時起こった日露戦争を取り入れた「無筆の号外」(明治37年)。これが大当たりし、現在の松竹新喜劇へとつながっていった。

そんな歴史ある名跡は松竹新喜劇の名優が名乗ってきた。戯曲も書いた十吾、映画やドラマなどでも存在感を発揮した明蝶、女性でただひとり曽我廼家を名乗った鶴蝶、味のある脇役だった五郎八。現在は劇団を離れたが、演技派として知られる文童は今公演にも出演。劇団在籍中の俳優は、八十吉、寛太郎、玉太呂の3人。それぞれ中心メンバーとして活躍している。

一蝶は「憧れていた名前。実感がわかないが、自分でも今後何ができるか楽しみ」と語り、女性では2人目の曽我廼家となったいろはは、「プレッシャーもあるが光栄でもある」。桃太郎は「上方喜劇の祖といわれる人の名前だけに自分でいいのかと不安もあるが、経験できない未来が待っていそう」と、3人それぞれが新時代の喜劇の創造に意欲を見せる。

大阪府出身の一蝶は軽やかな演技で近年は主役を演じる機会も増え、二枚目から三枚目まで幅広い。「僕は松竹新喜劇が大好きなんです。自分の出番以外でもずっと舞台袖で見ているほど」といい、「喜劇を演じるのは難しくて、苦しさと楽しさが半々。こんなすごい名前を継がせていただいたからには責任を持って喜劇の道を突き進んでいきたい」。

かれんな容姿でヒロイン役を演じるいろはは、大阪芸術大学でミュージカルを学んだ。「伝統も大切にしつつ、私と同世代の若い人たちにも喜んでいただけるようなお芝居を」と語る。

桃太郎は劇団代表の渋谷天外の付き人となり、喜劇の魅力にどっぷりはまった。「松竹新喜劇は心の中の深いところから笑わせてくれる芝居。いまの時代を反映するような作品を届けたい」と意気込む。(亀岡典子)

43年ぶり復活「お家はんと直どん」
錦秋公演は11月21日まで。NHK連続テレビ小説「おちょやん」でも描かれた「お家はんと直どん(おいえはんとなおどん)」を43年ぶりに復活上演。もう1本は新喜劇屈指の人気演目「お祭り提灯(ちょうちん)」という2本立て。「曽我廼家」に改名した3人は、両作品に出演する。チケットホン松竹

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