首相も絡む“安倍包囲網”の虚実

東京, 12月27日, /AJMEDIA/

 岸田文雄首相の誕生から2カ月半が経過したが、新たな「岸田政治」については、国民の間でも高い期待に厳しい批判と相反する評価が交錯し、「ぶれまくる首相」などのメディア報道が政権運営の迷走ぶりを際立たせている。その中で永田町が注目しているのが、首相と安倍晋三元首相の「政治的確執」だ。第2次岸田政権の発足に合わせて、自民党内の最大派閥・安倍派領袖の(りょうしゅう)として政治の表舞台に復帰した安倍氏が、保守派を代表して安保・外交などでこれ見よがしに自説を開陳して首相をけん制。首相も人事や政策運営で安倍氏の要求を「無視」することで対抗し、党内の“安倍包囲網”づくりを仕掛けているように見えるからだ。
 安倍氏は、盟友の麻生太郎副総裁と共に岸田政権発足の立役者とされ、「主流派の最高実力者」という立場。しかし、首相と麻生氏の蜜月関係とは対照的に、政権発足時から「水面下での岸田VS安倍」が取り沙汰されてきた。その「微妙な関係」(自民幹部)を一気に表面化させたのが、安倍氏の一連の言動だ。中でも、対中外交での「台湾有事は日米同盟の有事」とする発言は中国政府を激怒させ、米国と中国の仲介役を目指す岸田流外交への強い圧力となっている。
 安倍氏の狙いは、もともと親中派とされる岸田派領袖の首相に「対決への決断」を迫ることで、政治的揺さぶりを掛けたというのが大方の見方。しかもその背景には、首相が「地元山口での安倍氏の“天敵”」(自民幹部)で、今回衆院選で参院からくら替えしたばかりの林芳正氏の外相起用への強い反発があるとされ、それが「敵意むき出しの政争」などと虚実不明の臆測を呼ぶ原因となっている。
◇安倍氏には「聞き流す力」で対抗
 安倍氏は首相との2度の会談で「政権への全面支援」を約束したが、「それは表向きで、本音は逆」(安倍派幹部)とみる向きが多い。一方で、首相を含めた他の主流派実力者たちも「唯一最強のキングメーカー」(同)をアピールする安倍氏への反発と警戒心を隠せない。衆院選勝利で自信を付けた首相は、安倍氏に対しては「売り物の『聞く力』より『聞き流す力』で対抗」(岸田派幹部)。安倍氏もさまざまな手法で闘いを仕掛けるが、肝心の安倍派内でのポスト岸田候補をめぐる確執による求心力低下が「付け込む要因になっている」(同)とされる。
 12月6日の安倍派お披露目パーティーを機に、安倍氏が総裁選に擁立した高市早苗政調会長の派閥復帰を画策しているとのうわさもあったが、同派幹部の反発で立ち消えとなったとされる。高市氏自身も「安倍派になったら帰れるかなと思っていたが、しばらく独りぼっちかもしれない」と発言。パーティーでの来賓あいさつでは、対中強硬姿勢の安倍氏を高く評価したものの、安倍派議員席の拍手はまばらで、犬猿の仲とされる同派幹部の稲田朋美元政調会長が、高市氏に背を向ける形で議員席を離れる場面もあった。そもそも今回の安倍派立ち上げには、同派内に「体調不良で首相を辞めたのに、すぐに派閥会長就任というのは虫が良過ぎる」(幹部)との不満が鬱積(うっせき)していたのも事実だ。

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