選挙制度改革、思惑絡む与野党 「10増10減」、秋以降の焦点―参院選【公約比較】

東京, 7月7日, /AJMEDIA/

 与野党は参院選公約で、さまざまな衆参選挙制度改革を打ち出している。政府は秋に想定される臨時国会に、「1票の格差」是正へ衆院小選挙区定数を「10増10減」する公職選挙法改正案を提出する方針。参院も選挙制度の議論を本格化させる方向だ。党の消長に直結しそれぞれ思惑が絡むだけに、与野党の駆け引きが活発化しそうだ。
 ◇改憲、改革、勢力拡大
 自民党は公約で、憲法9条への自衛隊明記など党改憲4項目の一つとして「合区解消」を掲げた。2016年の参院選から鳥取と島根、徳島と高知がそれぞれ合区されたが、出身者を候補に立てられなかった県は投票率が低下する傾向が出ている。有権者の不満を背景に、改憲機運を醸成する狙いがある。
 立憲民主党は「衆院小選挙区の10増10減実行」を打ち出した。都市部の5都県で10増やす一方、地方10県で一つずつ減らすもので、政府審議会が6月、これに基づく区割り改定案を岸田文雄首相に勧告した。都市部での支持が比較的厚い立民に有利との見方もある。
 日本維新の会は統治機構改革の一環として「将来的な一院制導入」を盛り込んだ。改憲を含む大幅な制度改正が必要で、改革重視の姿勢をアピールする。国民民主党は合区解消に加え、衆院比例代表の復活当選の見直しなどを訴える。
 共産党は衆参で比例中心の制度へ移行するよう主張。れいわ新選組も衆院小選挙区に疑問を呈して「多様な民意を反映できる」制度導入を唱える。中小政党にとって、比例や一つの選挙区で複数が当選する制度は、勢力を拡大しやすい。
 NHK党は被選挙権年齢の引き下げをうたう。公明、社民両党は選挙制度改革に関する記述はなかった。
 ◇難航必至
 自民党は政府の公選法改正案がまとまり次第、国会提出前の事前審査に入る。党内では、10増10減を「地方軽視」と批判し、抜本的な制度改革へ与野党協議を求める声が上がるなど不満が強い。区割り改定で地盤が一部変わる議員も多い上、定数減となる山口県は安倍晋三元首相や林芳正外相ら「大物」がひしめく。関係者は「すんなり通るとは到底思えない」と漏らす。
 ただ、10増10減は16年成立の関連法で導入された「アダムズ方式」に基づく。自民党が関連法を提出しており、この段階での見直し論には「党利党略」との批判が上がる。立民が公約に掲げたのは、こうした動きをけん制する意図もある。
 一方、参院は1票の格差是正に向け、各派協議会で6月まで13回議論した。だが、合区解消は賛否両論が出て、定数増と減をそれぞれ求める意見が出るなど合意形成に至らなかった。参院選後に議論を再開するが、難航は避けられない見通しだ。

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