運航会社、際立つずさんさ 安全管理の不備次々に―観光船事故1週間

東京, 4月30日, /AJMEDIA

 北海道・知床半島沖で発生した観光船「KAZU I(カズワン)」の遭難事故から、30日で1週間。運航会社「知床遊覧船」(北海道斜里町)をめぐっては、事務所に設置されていた無線のアンテナが折れていたほか、船に衛星電話を積んでいなかったとみられるなど、ずさんな安全管理の実態が次々と明らかになっている。
 27日に記者会見した桂田精一社長は、無線アンテナが折れていることに気付いたのは事故当日の朝で、すぐ業者に修理を依頼したと説明した。ただ同社関係者は、それ以前からアンテナ破損に気付いていたとし、「冬の間に雪などにより折れたのでは」と指摘する。
 桂田社長は会見で「携帯電話や他の運航会社の無線でやりとりができるので、出航を停止する判断はしなかった」と釈明した。実際にカズワンから「浸水している」と無線連絡を受け、海上保安庁に救助要請をしたのも同業他社だった。
 衛星電話については、昨年から調子が悪いと認識していたが、故障を知ったのは事故後だったと説明。「(カズワンに)積んでいたと認識していたが、実際には積んでいなかったと聞いている」と曖昧な回答に終始した。事故2日前に網走海上保安署が行った安全点検では、自船の位置を知らせる全地球測位システム(GPS)装置が搭載されていなかったことも明らかになった。
 事故当日は波浪注意報や強風注意報が出ており、桂田社長も「把握していた」という。しかし午前8時に船長と打ち合わせした時点では港周辺の波風は強くなかったとして、海が荒れたら引き返す「条件付き運航」で出航を決定していた。
 カズワンは昨年2回事故を起こし、うち1回は今回と同じ船長だった。会見で桂田社長は「結果的に安全管理は行き届いていなかった」と認めた。
 海上保安庁は、業務上過失致死などの容疑で捜査。同社側に安全管理上の過失があったかを判断するには、事故原因の特定が不可欠で、29日に発見された船体の引き揚げ後、捜査を本格化させるとみられる。

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