安倍氏追悼演説、甘利氏から変更も 「遺族意向」に疑問の声―自民

東京, 7月30日, /AJMEDIA/

 秋の臨時国会へ先送りの方向となった安倍晋三元首相の追悼演説をめぐり、自民党内で29日、予定していた甘利明前幹事長から登壇者を変更するよう求める声が上がり始めた。「お友達」起用が問題視されている点以外に、甘利氏が安倍派幹部の力量に疑問符を付けたことに同派が反発し、「遺族の意向」とする説明を疑う向きもあるためだ。代わりとして菅義偉前首相や立憲民主党の野田佳彦元首相が挙がっている。
 自民党は当初、追悼演説を8月5日の衆院本会議で行う方針だった。慣例から与野党の首相経験者の登壇が予想されたが、執行部が白羽の矢を立てたのは安倍氏を第1次政権から支えた甘利氏。野党は閣僚在任中の金銭授受問題を踏まえ、再考を求めた。
 この人選は経緯が不透明なこともあり、自民党内にも問題とする空気があった。「遺族の意向」が理由とされたが、安倍氏周辺は昭恵夫人が希望したとの報道を「うそ」と否定。岸田文雄首相周辺は、葬儀の弔辞は麻生太郎副総裁、国葬の弔辞は首相、追悼演説は甘利氏が担うことで「前から決まっていた」と証言した。
 党内では、甘利氏が所属する麻生派会長の麻生氏の意向が働いたとの見立てが強い。昨秋の衆院選の小選挙区で敗れ、幹事長の座から約1カ月で降りた甘利氏にとっては久々の表舞台になる。首相は26日午後、麻生氏、茂木敏充幹事長と会談。同日夕以降に「追悼演説は甘利氏」との情報が広がった。麻生派ベテランは「『遺族の意向』と言えば野党も黙ると思ったのだろう」と語る。
 甘利氏の起用には特に安倍派の一部が異論を唱えた。同派の現状について甘利氏は自身のホームページで「誰一人全体を仕切る力もカリスマ性もない」と指摘。これに派の最高顧問を務める衛藤征士郎氏が「侮辱だ」と猛反発し、ある若手も「過ぎた発言だ」と憤りを見せた。
 こうした状況も勘案し、政府・与党は28日の段階で演説の延期に向け調整に入った。安倍氏側近は野田氏とする案について「一番いい」と語り、麻生派の閣僚経験者は「安倍政権を支えた菅氏がふさわしい」との考えを示した。

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