倍賞千恵子「さくらと同じように役が入ってきた」 映画「PLAN 75」でヒロイン好演

東京, 6月29日, /AJMEDIA/

 公開中の映画「PLAN 75」(早川千絵監督)で、倍賞千恵子が人生の「最後の選択」を迫られたヒロインを好演している。近未来の日本で、75歳以上の高齢者が自ら死を選べる制度「プラン75」を前に揺れ動く役どころ。「普段から考えたり、感じたりしていることが役に入っていた」といい、スムーズに役と同化できたようだ。
 倍賞が演じるホテルの客室清掃員・ミチは、仕事を解雇され、長年暮らす団地からの退去も余儀なくされる。新たな職場と住まいを探そうとするが、うまくいかず、徐々に生きる希望を失っていく…。
 「現在の日本が抱える高齢者や就職の問題、海外からの労働者の増加など、さまざまな要素が含まれている映画」と倍賞。81歳の誕生日を控える中、「普段から生きることや死ぬことへの思いが膨らんでいた。作品を通して『命はどういうものなのか?』を改めて考えさせられた」と語る。
 脚本は、今作が初長編作となる早川監督のオリジナル。今年のカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門に出品され、カメラドール(新人監督賞)に次ぐスペシャルメンション(特別表彰)を受けて話題となった。
 倍賞は、今作のような新鋭との仕事にも積極的に取り組む。キャリアを重ねると、大ベテランへの遠慮なのか、周囲が「だんだん何も言ってくれなくなる」そう。「でも、監督から言われたことの120パーセントを表現するのが私たちの仕事。千絵監督が(役について)説明してくださるたびにミチが深くなっていった」と感謝する。
 若い頃は「勢いだけで演じていた」と笑うが、経験を重ねるにつれて「役が自分の中に入ってくる」感覚を味わうことが増えたという。特に当たり役となった「男はつらいよ」シリーズのさくらは、「(撮影が終わっても)次第に抜けなくなって、今も小指の先ぐらいに残っているのではと思うほど」。
 「今回もさくらと同じようにミチさんが入ってきた。スタッフの思いを受け取ってミチさんが出来上がった気がする。撮影が終わった後も『ああ、やってよかった』と思えました」。
 歌手としても活躍し、「二兎(にと)を追う」芸能人生を送ってきた。二つの世界を行き来することで「それぞれの表現の仕方や物事の捉え方が広がった」。6月25日には東京オペラシティで「バースデイコンサート」を開催。俳優としては「人をだます役」にチャレンジしたいと、今後の抱負を明かしてくれた。(時事通信社・小菅昭彦)
 ◇倍賞千恵子(ばいしょう・ちえこ)=1941年6月29日生まれ、東京都出身。映画の出演作は「下町の太陽」「家族」「幸福の黄色いハンカチ」「駅 STATION」「小さいおうち」など。「ハウルの動く城」「天気の子」などでは声優を務めた。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts