事故原因、究明なるか 特定至らず立件見送り例も―業過致死捜査・知床事故

東京, 5月23日, /AJMEDIA/

 北海道・知床半島沖で観光船「カズワン」が沈没した事故は、発生から1カ月を経て船体引き揚げの見通しが立った。海上保安庁は陸揚げ後、業務上過失致死容疑などでの捜索を本格化させる。近年に発生した重大事故では、原因が特定できず同容疑での立件が見送られた例もあり、陸揚げ後の船体調査などで事故原因を究明できるかが鍵となる。
 運航会社側による事故当日の出航判断や運航管理をめぐっては、法令違反などの疑いが相次いで浮上している。しかし、いくら問題があっても、沈没の原因に結び付かなければ刑事上の過失責任を問うのは難しい。
 カズワンは24日にも作業台船上に載せられ、週内にも網走港に陸揚げされる予定だ。海保はその後、船体の損傷や操縦系統の異常の有無などを詳しく調べるが、調査が原因特定につながらない可能性もある。
 2015年に調布飛行場(東京都)の小型機が墜落した事故では、運輸安全委員会や警視庁は重量超過を主な原因としたが、検察は特定に至らなかったと判断。墜落機の管理会社社長を同容疑について嫌疑不十分で不起訴とした。
 一方、16年に長野県軽井沢町で起きたバス転落事故で検察は、技量不足による操作ミスが原因と特定。技量を確認せず運転手を雇い、指導監督も怠ったとして運行会社の社長らを起訴した。
 いずれの事故も発生時の状況を知る機長や運転手が死亡しており、発生から刑事処分まで5、6年を要した。カズワンの事故でも船長は行方不明で聴取は難しい。船体などから原因を推定できても専門家による客観的な裏付けなどが必要となり、捜査の長期化は必至だ。
 ある検察幹部は「船体の検証、沈没前の状況などから原因特定につながる証拠を固めることになる。その上で(運航会社側の)過失との因果関係を立証できるかどうかだ」と指摘する。

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