ビックカメラ濱村、上野不在のマウンド守った2165球 ソフトボールJDリーグ

東京, 11月14日, /AJMEDIA/

 女子ソフトボールのニトリJDリーグは13日、千葉ZOZOマリンスタジアムでダイヤモンドシリーズ決勝が行われ、ビックカメラ高崎が豊田自動織機を2-1で破り、新リーグ初代王座に就いた。日本リーグからの通算では4連覇。工藤環奈と藤田倭の本塁打でリードし、七回に1点を返されたが、先発・濱村ゆかりが踏ん張った。濱村は前日の準決勝に続く完投勝ちで、シリーズMVPに。上野由岐子不在のマウンドを、投手陣の柱として守り抜いた1年だった。
◇急展開にも粘りの投球
 六回まで散発3安打に抑えていた濱村を、ゴール目前で勝負の厳しさが待っていた。七回先頭のグッドエーカーにソロ本塁打を浴び、1点差。さらに四球と犠打で1死二塁と、一打同点のピンチを迎えた。
 8番・椛山奈々を遊ゴロに打ち取り、9番は前日の準決勝、トヨタ戦で延長八回に決勝2ランを放った大平あい。少し前から黒い雲が広がり、雨が振り始めた球場に、文字通り風雲急の緊張感が満ちた。
 だが、バッテリーは勝ち急がず、フルカウントからの6球目。外角球をたたいた大きなフライを左翼手・松本怜奈がグラブに収めて、長かった新リーグ1年目が終わった。
 濱村は前日の準決勝でも日立を2-1で振り切り、2日連続完投勝利。計230球を投げて、大勝負のマウンドに立ち続けた。
 七回は「せっかくみんなが点を取ってくれたのに、簡単に1点取られて申し訳ないと。でも粘り強く投げるのが自分の特長なので、丁寧に、ボール球が多くなってももう1点は絶対取らせないと思って投げました」。
◇対戦相手もうなった成長
 新生JDリーグになり、レギュラーシーズンの試合数が22から29増えた。ビックカメラ高崎は、上野の膝などの状態が回復せず、登板できないまま。投打2WAYの藤田は主砲・山本優の引退で打撃の比重が高くなり、勝股美咲は成長しつつも濱村と両輪を形成するまでにはなっていない。
 岩渕有美監督は長丁場を見据え、継投策も多用したが、それでも濱村は21試合に登板して13勝(東地区2位)2敗、防御率0.81(同1位)。112投球回、1935球は昨季の倍以上に上り、東地区で3番目に多かった。
 この2試合と合わせて126回、2165球を投げた。「みんなを信じて投げた結果。今までにないくらいたくさん投げさせてもらって、いいこと、苦しいこと、いろんな経験ができてすごく濃い1年だった」という。
 捕手の我妻悠香も成長を感じた。「試合数が多くていろんな相手と試合する中で、どのボールでカウントをつくるか、どういうボールをどういう軌道で使うか意思疎通ができていた。緊迫した試合で投げるのはすごく難しいと思うけど、しっかりボールを使いながら思ったところへ投げられるようになった」
 対戦した監督たちも口々に「球は速い、切れがある、コントロールがいい」「投げミスがほとんどない」「タイブレークに持ち込めば何とか勝機があるかな、というぐらい」とうなった。
◇「気持ち」込め、地元で恩返し
 レギュラーシーズンに2日連続完投はなかったが、抜群の安定感から、岩渕監督が2試合とも託すのは衆目の一致するところだった。「ハマは1年間本当によく投げてくれた。準決勝、決勝もしっかり投げ切ってくれた」。涙もろい岩渕監督の方が先に頬を濡らした。
 準決勝前日の練習後、「優勝するまでは」と繰り返す硬い表情に自覚が感じ取れた濱村。「千葉だからいろんな人が見に来てくれるのでは」と向けた時だけ、「はい」と顔をほころばせた。
 千葉・木更津総合高出の9年目。2018年に千葉で世界選手権が開かれ、日本は準優勝したが、自らは体調が悪くて登板機会がなかった。今年3月、この球場で行われたJDリーグ開幕戦も先発完投し、トヨタに0-1で惜敗している。
 ようやく地元で見てもらえた最高の晴れ姿。「千葉で始まって千葉で終わることがとてもうれしくて、こういう時しか感謝の気持ちをプレーで表すことができないのでよかった」という。
 最終選考で15人の代表に入れなかった東京五輪。今季、これほどの投手の名前が、五輪より人数の多い日本代表になかったことには、濱村の重い決断と覚悟がにじんで見えた。つらかったことを聞かれても公の場では話さない選手だが、この2日間の投球は「気持ちが入ってます!」。短い言葉が答え。
 自分に厳しくて弾けたコメントもしないが、「来季はまた今季とは違う濱村をつくっていけるようにしたいと思います」と、頼もしい言葉も聞けた。

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