「避難民」位置付け曖昧 難民認定・法整備に課題

東京, 4月2日, /AJMEDIA/

 政府は1日、林芳正外相をポーランドに派遣し、ロシアの侵攻を受けるウクライナから逃れた人々の支援を加速させる。「避難民」として国内に迎え入れ、日本の積極支援をアピールする。ただ、避難民は手厚く保護される「難民」とは異なり、国内法上の位置付けは曖昧だ。今回はあくまで特例的な扱いであり、難民認定の在り方や法整備が今後課題になりそうだ。
 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、ウクライナを離れた避難者は3月30日時点で約405万人。多くがウクライナ周辺の国々に散らばり、最多の236万人がとどまっているポーランドからは「受け入れ能力が限界」などと悲鳴が上がっている。
 日本政府も3月上旬から避難民としての受け入れを開始した。3月30日までに337人が来日。まずは90日間の滞在を認める在留資格「短期滞在」を付与する。希望があれば在留資格を就労も可能な1年間の「特定活動」に切り替え、戦争が続く限り更新取得を認める方針だ。
 当面の在留資格で急場をしのぐのは、避難民に法的な地位を与える規定が国内法にないことによる。入管難民法が定める難民なら永住資格の取得要件が緩和されるが、避難民は法律上の難民とは区別されるため、不安定な状態に置かれる。日本政府はかねて難民認定に慎重と指摘され、制度が導入された1982年以降、認定者はわずか841人にとどまっているのが実情だ。
 難民の定義から漏れる人々を「準難民」として救済するため、欧米では「補完的保護」の仕組みづくりが進む。日本でも昨年の通常国会に提出された入管難民法改正案に「補完的保護」の創設が盛り込まれたが、与野党対立のあおりで廃案となり、実現していない。
 立憲民主党は3月下旬、新たな在留資格「戦争等避難者」を設ける特例法案を衆院に提出した。今回の受け入れを機に、積極的な難民認定や避難民保護の法整備を求める声が高まりそうだ。
 一方、政府は外相派遣に使う政府専用機が帰国する際、希望する避難民の同乗を認める方向で検討している。政府関係者によると、希望者は数十人に上る可能性がある。自衛隊機で外国人避難民を運べば、2021年夏にアフガニスタンからアフガン人14人を輸送して以来2回目となる。
 ただ、今回の対応は外国人輸送に関する法律の不備も浮き彫りにしている。自衛隊機によるアフガン人輸送を可能にしたのは、「在外邦人等の輸送」に伴う「外国人の同乗」が自衛隊法に規定されていたからだった。今回は「在外邦人等の輸送」の予定がなく、法的根拠はぼやけている。
 政府は自衛隊機による外国人だけの輸送を可能にする自衛隊法改正案を今国会に提出している。ただ、改正案は日本の在外公館で働く現地スタッフなどを主な対象と想定しているため、今回のようなケースに適用できるかは不透明だ。

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