「もう一度選ばれる観光地に」 客半減、地域一体で安全対策―知床観光船事故1年

東京, 4月23日, /AJMEDIA/

観光船「KAZU I(カズワン)」の事故は、世界自然遺産として人気の観光地、知床の観光業全体に影を落とした。地元斜里町を訪れる観光客はコロナ禍前から半減。「もう一度選ばれる観光地に」と、町や観光事業者は地域ぐるみで安全対策を強化し、信頼回復に取り組んでいる。
 観光船クルーズに加え、登山や流氷ツアーなど、自然体験を楽しみに多くの観光客が訪れる斜里町。書き入れ時の夏季シーズンである5~10月、コロナ禍前の2019年は約96万人の来客があったが、事故が起きた昨年は約53万人に落ち込んだ。同町観光協会の新村武志事務局長は「ようやく観光客の戻りを期待していた中での出来事で厳しかった」と振り返る。
 観光船事業者も多大な影響を受けた。地元の運航会社4社でつくる「知床小型観光船協議会」は事故を受け、営業を一時自粛。全社統一で安全運航に向けたルールを定め、6月に運航を再開したものの、コロナ禍前の1割しか客足が戻らなかった事業者もあるという。
 町は昨年8月、安全対策の仕組みづくりを目指し、観光事業者や専門家が参加する協議会を設置。今年3月の中間報告では、場所や気象条件などから高い危険が想定される自然体験については、地域一括で催行を判断する方向性を示した。観光客に安全に関する正しい情報を伝えるため、地域統一のホームページなどを作成し、情報発信の強化にも取り組む。
 小型観光船協議会の神尾昇勝会長は「安全運航を続けていくことで、信頼回復につなげる」と強調。新村さんは「もう一度選ばれる観光地を目指したい」と力を込めた。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts