復興拠点、活気少しずつ 施設誘致、除染区域拡大も―避難指示解除1年・福島県大熊町

東京, 6月30日, /AJMEDIA/

東京電力福島第1原発事故に伴う帰還困難区域のうち、福島県大熊町に設定された「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)の避難指示が解除されてから30日で1年を迎える。拠点内の居住者は1日時点で62世帯90人となったが、解除5年後の目標である2600人までの道のりは長い。それでも、商業施設の誘致が進むなど、少しずつではあるが活気は戻ってきている。
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 復興拠点内にあるJR常磐線大野駅前は更地が広がる。大熊町は駅前を商業エリアとして開発する計画で、基盤整備が始まっている。2024年12月には、飲食や買い物ができる商業施設やオフィスを誘致する施設が完成予定だ。今年度は水稲の実証栽培も始まり、収穫した米は全量検査で安全性が確認できれば食べることも可能で、営農再開も近づく。
 同町出身の小泉良空さん(26)の実家は復興拠点内にあるが、ほとんど取り壊した。「近所も含めて昔ながらの家が多く、直して住むのは難しい。景色はすごく変わった」と語る。いずれは唯一残した離れを改修して住むのが目標で、現在は拠点内のアパートで暮らす。「スーパーがないので不便は感じる」と話す一方、「避難指示解除を機に、ピクニックや花の手入れなど外でやってみたいことに挑戦している」と前向きだ。
 今月には改正福島復興再生特別措置法が成立。帰還困難区域に「特定帰還居住区域」を新設し、復興拠点の外でも国費で除染して住民帰還を促すことが決まった。大熊町は「帰還に前向きな人が多かった」として下野上1区を同区域に設定。下野上地区の一部は既に復興拠点で、「拠点内外で住民の分断が起きている」と不満も出ていたため、期待は大きい。下野上1区の除染は年内にも始まるとみられる。
 帰還困難区域について、国は20年代に、希望する住民全員が戻れるように取り組むとしている。しかし、住民からは「近所がいるのかも分からないのに、帰還は決められない」「まだら除染では帰れない。全面除染が当たり前だ」といった声が聞かれる。戻らない住民の家屋や土地の取り扱いについても、いまだ方針が示されないなど、帰還が進まない要因となっている。

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