伊藤美誠が会心デビュー、京都参入も新風に Tリーグ開幕・女子編

東京, 9月13日, /AJMEDIA/

 卓球のノジマTリーグは10、11日に東京・大田区総合体育館で男女各2試合が行われ、2022-23年シーズンが開幕した。女子は伊藤美誠(スターツ)が日本生命に加わり、5季目で初めてTリーグに登場。前季の九州に続いて京都が新規参入しチーム数も6になった。選手層が厚くなり、チーム同士の順位争いとともに個々のカードも注目の対戦が増えそうだ。
◇いきなり伊藤-平野の好カード
 10日夜の開幕カードは5連覇を狙う日本生命と、悲願の初優勝を狙う木下神奈川。早田ひな、森さくらの主力に伊藤が加わった日本生命に対し、木下神奈川は石川佳純(全農)、木原美悠(エリートアカデミー)に日本生命から平野美宇(木下グループ)が移籍し、長崎美柚(同)も戻ってナショナルチームの選手が4人になった。張本美和(木下アカデミー)もいる。激戦が予想された。
 だが、結果は4-0で日本生命の快勝。ダブルスで麻生麗名・笹尾明日香が木原・長崎の強豪ペアを倒したのが殊勲で、長崎のレシーブを封じる策を授けた村上恭和総監督は、してやったりだった。
 その後のシングルスでは早田が木原を3-1で下し、続く伊藤の相手は平野。両監督も想定したオーダーだったという。伊藤のデビュー戦、平野の移籍第1戦にふさわしいカードに、会場は大いに盛り上がったが、9月初めの第2回パリ五輪代表選考会・全農カップを制した伊藤が、3-1で勝ってTリーグ初戦を飾った。
 フロアに1コートだけ。観客席の照明を消したTリーグの演出に、伊藤は「決勝の舞台を戦っている感じで、緊張感もありながら楽しく試合できた」という。プレーは「しっかり向かっていけた。どの選手とやっても向かって来るので、その上をいけるように」。
◇冷静と強気の伊藤
 とはいえ、しゃにむに攻めるのでなく、確実にコースへ入れて圧力を掛ける打球と決定打を見極めて「1点1点、落ち着きながら向かっていけた」。全農カップ同様、力の入ったバックハンドがネットに掛かるミスが少ない。
 この日は第1ゲームこそバックのミスが出て落としたが、第2ゲームは修正。続く2ゲームはバックのミスがあっても2本、3本と続くことがなく、主導権を渡さなかった。
 日本選手に慣れられ始めたサービスも、コースや種類の組み合わせを練り上げて使い分け、第4ゲームは10-8でフォア側からの投げ上げサービスを使って振り切っている。レシーブは回転、長さなどの要素のどれを最優先するか、1球ごとの狙いが明確。ここにも思い切りの良さがうかがえた。
 村上総監督は相手の平野も含めて「芸術的な試合だった」と評し、伊藤加入の効果を「早田が楽になったんじゃないかな」と話した。
 木下神奈川は4番でも石川が李佳※(火火の下に火火)(中国)に敗れ、勝ち点4を献上した。勝敗が決した後なので(Tリーグは必ず4番まで行う)石川もさばさばしていたが、チームとしては今後、成長著しい張本の出番がどのくらいあるか、などの起用法が注目される。
◇間に合った京都、チームづくりはこれから
 11日はTリーグ新規参入の京都と九州の対戦。京都は日本ペイントのコーチだった池袋晴彦代表兼監督が設立に奔走し、コロナ禍もあって外国人選手の契約など困難が続いたが、9日に外国人選手が来日して開幕に間に合った。入場行進をしながら「京都のために戦ってくれる選手がいる」と、思いを熱くしたという。
 対する九州は、前季初参入でプレーオフ進出を果たした。主力だった佐藤瞳(ミキハウス)、橋本帆乃香(同)が日本ペイントへ移籍し、加藤美優(吉祥寺卓球倶楽部)らを迎えた2季目。川面創監督は「先輩(チーム)として何とか勝ちたいと臨んだ」という。
 結果は九州が3-1で白星発進。ダブルスを取り、2番のシングルスを奪われた後、野村萌(デンソー)が魏聞声(中国)に0-2から逆転勝ちしたのが大きかった。4番では加藤が成本綾海(中国電力)に貫禄勝ち。
 初陣を飾れなかった池袋監督は「負けは受け止める」と悔しそうだったが、チームづくりはこれから。登録選手8人のうち5人が外国人選手のチームを、主将の成本が自らも成長しながらどうまとめていくかが、一つのカギになる。
◇小3・松島もベンチ入り
 京都には小学3年の松島美空もいて、この日は出番がなかったが、ベンチ入り。試合後は報道陣に囲まれ、「すごい人たちの試合を見て勉強になった」と話した。池袋監督は「話題づくりで出すこともあるかもしれないが、実力で出番を勝ち取ってほしい」という。
 16日には日本ペイントと名古屋も初戦を迎える。名古屋は木村香純、小塩遥菜らが加わり、日本ペイントは佐藤、橋本、芝田沙季のミキハウス勢が中心か。
 女子の開幕戦は2333人の観客が来場した。卓球観戦の古典的な醍醐味は、台から下がれる男子の豪快なドライブのラリーにあったが、最近は女子が台の近くで繰り広げる超高速の長いラリーに大きなどよめきと拍手が起きる。
 コロナ禍が続き、まだ握手やサインなどのファンサービスには慎重にならざるを得ないが、増えてきた国際大会、パリ五輪代表選考レースと並行して、熱いシーズンが期待できそうだ。(時事通信社 若林哲治)(氏名の後にカッコ書きがない選手はTリーグのチームと所属先が同じ)

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