“スクールフォト”学校のカメラマンが足りない!?当事者に聞く

東京, 03月23日 /AJMEDIA/

「このままだと、カメラマンを確保できなくなる日が、いつか来るかもしれない」
長年、スクールフォトと呼ばれる学校行事を載せた学校写真を手がけてきた会社の言葉です。
今、学校行事を撮影するカメラマンを取り巻く環境が厳しく、担い手不足が課題になっているといいます。
「卒業アルバム」はどうなってしまうのか…

学校のカメラマン ネット上で議論
卒業式や入学式、それに修学旅行や運動会といった学校行事を撮影する人は「スクールフォトカメラマン」とも呼ばれ、学校と契約して多くが年間を通して学校の内外で子供たちの姿を撮影します。

卒業アルバムの写真撮影もスクールフォトカメラマンの仕事で、編集や制作まで担うところもあります。

この、スクールフォトカメラマンをめぐり今月、ネット上で議論が巻き起こりました。

多くのカメラマンをSNSで募った投稿に対し、不安の声が上がったのです。
さらに、スクールフォトカメラマンの仕事の大変さや、人材不足といった、この業界を取り巻く環境が厳しさを増しているという声も投稿され、議論を呼びました。

学校を卒業して10年以上たつ私(記者)も子供のころ、学校カメラマンにお世話になった記憶があります。

その職業を取り巻く現状はどうなのか?当事者の声を聞くことにしました。

「カメラマンが減っている」町の写真店も…
名古屋市で、半世紀以上スクールフォトを手がけてきた会社を経営する小島一高さんは、この道30年以上のベテランです。

取材に訪れた日も、終業式の撮影がありました。

「募集しても、以前よりカメラマンが集まりにくくなっているのは間違いありません」

スクールフォトカメラマンをめぐる現状をこう話してくれました。

カメラマンが少なくなった理由の1つは、デジタルカメラやカメラ付きスマートフォンの普及だと言います。

誰でも手軽に写真が撮れるようになり、町の写真店の多くが姿を消していきました。

そして特に大きいのがコロナ禍の影響だとしています。

「コロナ禍でブライダル関係のカメラマンを中心に廃業する人が相次ぎました。うちは自社のカメラマンが4人いて、今のところ人手不足という状況ではありませんが、このままの状態が続けば、いつかは撮影を頼めるカメラマンがいなくなるといった可能性も、ゼロではないと感じています」

「苦労の割に報酬が見合っていない」
「とにかく大変でした」

こう話すのは、かつてスクールフォトの仕事に携わっていたフリーランスの女性です。

子供たちの撮影は、多くの苦労があったと言います。

例えば運動会では、プログラムごとに子供たち一人ひとりの表情を撮影する必要があり、子どもが目をつぶってしまった写真はミスショットとなり納品できません。

帰宅後には何千枚もの膨大なデータの整理も待っています。

撮影機材は自費で用意します。

それでも、報酬は1回1万2000円ほどと安く、割に合わなかったこともあったと言います。

「拘束時間や仕事内容と報酬が見合っていないと感じました。報われないというか…子供たちが動き回る中で、とにかく枚数を多く撮ることを求められるので、素敵な写真に仕上げるのは難しく、1年くらいで断るようになりました。やりがいを見いだすのが難しかったです」

報酬をめぐっては、10年以上前から業界内では見直しの議論があるものの、進んでこなかったといいます。

背景には、公立学校では業者の選定が入札で行われることもあり、互いに安売りになるという指摘もあります。

子供の姿を残す 根強い需要も「差別化で生き残る」
一方、取材を通して、子供の姿を残す仕事への需要は根強くあるという声も多く聞かれました。

教員の働き方改革が進む中、写真を専属で撮影するカメラマンの仕事の必要性は、高まっているところもあるということです。

卒業アルバムもその1つです。

スクールフォトを手がける小島さんの会社には、これまで作り上げた卒業アルバムが大切に保管されていました。

(小島さん)
「大人になって皆でアルバムを見せ合い、昔を懐かしんだことがある人は多いと思います。災害に見舞われた時、卒業アルバムを一生懸命に探しだす人がいます。卒業アルバムはやはり普遍的な価値を持つものなのだと思っています」

カメラマンを取り巻く環境が厳しさを増す中「差別化しないと生き残れない」とも小島さんは話します。

「子供たちや保護者から感謝の声をもらう時が何よりやりがいを感じる瞬間です。この仕事を続けていくためにも、AIを使った顔判システムの導入も進めています。誰もが気軽に写真を撮れる時代、自分たちにしかできないことをやっていくことで、適正な対価を得ていきたいと考えています」

これらの問題はすぐに解決するものではありませんが、ユーザーの私たちも、その担い手の現状に目を向ける必要があると取材を通して感じました。

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