コロナ全数見直し「課題多い」 知事ら、目立つ慎重姿勢

東京, 9月4日, /AJMEDIA/

 新型コロナウイルス感染者の発生届を高齢者らに絞り込む全数把握の見直しをめぐり、都道府県の判断による先行的な運用が始まった。全国知事会(会長・平井伸治鳥取県知事)の要望を受けた対応だったが、第1陣は4県のみ。その後、徐々に広がりつつあるものの、軽症者の健康観察が適切に行えないなどの不安から、「課題が多い」と慎重な姿勢を示す知事も目立つ。
 知事会は、オミクロン株の派生型「BA.5」の感染急拡大を受け、逼迫(ひっぱく)する医療現場の負担軽減のため、保健所への発生届提出を高齢者らに限定することなどを政府に要請。これを受け、岸田文雄首相は「緊急避難措置」として、希望する都道府県に全数把握見直しを先行適用し、準備が整えば全国一律対応とする方針を示した。
 ところが、初回申請期限である8月29日までに厚生労働省に届け出たのは宮城、茨城、鳥取、佐賀の4県にとどまった。平井氏は「(4県知事は)キツネにつままれた」と思わず苦笑。厚労省幹部は「知事会が『すぐにやれ』と言うから始めたのに…」と不満を漏らした。
 各知事が課題に挙げたのは、発生届の対象外となる軽症者らの健康観察や急変時の対応だ。感染者の連絡先や状態が把握できないことで、症状が悪化した際、迅速な治療に支障が出る可能性がある。また、軽症者の発生届は不要だが、人数などの報告は引き続き必要で、「事務負担の軽減につながるか分からない」との懸念もある。
 9月1日の知事会オンライン会議では、佐賀県の山口祥義知事が「(先行した)4県がパイオニアとなり、コロナ対策に大きな役割を果たせるよう頑張りたい」と表明。一方、神奈川県の黒岩祐治知事は「(発生届の対象外となった)個人が特定できない中で、どうやって行政サービスをプッシュ型で実施するのか。大きな矛盾点がある」と指摘した。
 2日には、先行4県で発生届の対象外となる軽症者向けサポートセンターの稼働など、見直しに基づく運用がスタートし、新たに三重、長崎両県が見直しを申請。福井県は近く届け出る方針だ。大阪府も「9月下旬までに課題を整理した上で(見直しを)行う」(吉村洋文知事)としており、平井氏は「先行実施は増えていく」と語る。
 ただ、判断を自治体任せにせず、国が責任を持って対応するよう求める声も根強い。東京都の小池百合子知事は1日、政府に「基本的な方向性」を明示し、全数把握見直しの統一的な方針を決めるよう要望。福岡県の服部誠太郎知事は「国の見直しをしっかり見極めたい」としている。

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