東京, 04月11日 /AJMEDIA/
転職直後に孤独を感じていた社員が、他の社員と話すきっかけとなった“自動販売機”。
新たなコミュニケーションツールになっています。
(2024年4月8日 おはよう日本で放送)
人材確保のため 福利厚生に力を入れる企業
殺虫剤などの製造・販売を行う大手日用品メーカーです。
お昼どきになると、リフレッシュスペースにある自動販売機に次々と社員が集まります。
お目当ては、ことし1月に導入されたこちらの“自動販売機”。
通常とは異なる機能を持つのが特徴で、2人そろって同時に社員証をかざすと、好きな飲み物をそれぞれ選べ、1人1本まで、会社が費用を負担してくれるというものです。
利用者は1日に30組ほど。この2か月余りで500人ほどに上りました。
「すごくうれしいですね。毎日助かってます」
「仕事へのモチベーションも上がるので、仕事頑張ろうっていう気持ちになる」
企業が負担するのは主に飲料代のみです。
このメーカーの場合は月に30万円にのぼりますが、福利厚生を充実させることで社員の帰属意識を高めるメリットがあると考えています。
大手日用品メーカー 管理本部 総務部 副部長 鯨井理雄さん
「当然安くはないんですけどれも、働きやすさというところは、非常に大事にしています。会社がみなさんのためにやってますよ、というところは感じていただければ」
大手飲料メーカーが開発したこの自動販売機。
3年前にサービスを開始したところ、設置を希望する企業は多く、現在は400社以上が導入しています。
2人揃うことで利用できる機能を開発した背景には、働き方の変化などで、社員同士の交流が減っていることへの危機感があります。
「ながら」コミュニケーションが減っている
大手飲料メーカー VM事業本部 マーケティング部 松本俊さん
「従来あった“飲みニケーション”ですとか、“タバコミュニケーション”といったもの、そういった『ながら』コミュニケーションが減っている。食事までは至らないけれども、あいさつよりは少し、自分から進んでということで、コミュニケーションがとれるようなものができないかということで考えました」
若手社員が直面する悩みを解決しようと、導入を決めた企業もあります。
東京に本社を構えるマーケティング会社です。
170名ほどいる社員のうち2割が新入社員と中途社員。
リモートワークが多く、顔見知りもできず孤立してしまう人も少なくなかったといいます。
そこで、おととし、この“自動販売機”を設置。
さらに、新入社員・中途社員には他の社員との利用回数に上限のない特別なカードを持たせることにしました。
マーケティング会社 エージェンシーグループ マネージャー 後藤由希子さん
「(企業に)入ってきてくれた方々が、より既存の先輩社員とコミュニケーションをとりやすいきっかけを作りたいなと」
去年、中途採用で入社した企画部の石川栞菜さんです。
転職直後は同期もおらず孤独を感じていました。
「誰にまず話しかけていいのか、自分の中でもわからないってところはすごい不安なところでありました」
しかし、“自動販売機”の導入後は、他の社員と話すきっかけができました。
「きょう無限カードもってるんですけど、どなたかピッ行きませんか?」
「行きます」
「はい」
「行きましょう」
この日、石川さんの呼びかけに応じたのは、面識のない営業部の社員などです。
「決まりました?」「決まりました」「ピッピッ」
「出社されてますか?」「してます最近、週3回くらい」「週3?めちゃくちゃしてる、またピッしましょ。ありがとうございます」
「そうなんです、はじめてお話ししました」「うふふ」
こうした交流で、部署や世代を超えて知り合いを増やしている石川さん。
自動販売機が新たなコミュニケーションツールになっています。
中途採用で入社 石川栞菜さん
「本当にラフな感じでコミュニケーションが最初に取れるきっかけとしたらすごくよいかなと思っています。私も積極的に皆さんに声をかけて、コミュニケーションを図っていきたいなと思います」
この自動販売機、マンションや病院などでの導入も始まっていて、たとえばマンションでは、入居者どうしのコミュニケーションの活性化を目的に、不動産会社が設置しているそうです。
大手飲料メーカーが行った導入企業へのアンケートでは、この“自動販売機”の利用に際して、平均およそ3分の雑談が生まれているという結果が出ました。
上智大学 言語教育研究センター 清水崇文教授
「雑談は、周囲の人と良好な人間関係を育み、物事を円滑に運ぶために行っている会話。会社組織や働き方の多様化が進む中で、雑談を通して互いに関する知識を共有することは、より一層重要になる」