「大熊町シンボル」解体を選択 国費適用期限迫り、苦渋決断―福島原発

東京, 6月30日, /AJMEDIA/

「特定復興再生拠点区域」(復興拠点)では、修繕が難しい公共施設などの解体費用は国費で賄われる。福島県大熊町の国費解体の申請締め切りは30日で、町は図書館や学校などほとんどの施設で解体を選択。ただ、町のシンボルとも言える施設がなくなることには町民の反対も強かった。
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 「同じ町民として見慣れた風景がなくなる寂しさは分かる」。大熊町の担当者はこう話す。ただ、解体する建物の多くは東京電力福島第1原発事故の影響で10年以上立ち入りが制限され適切な維持管理ができておらず、修繕は困難だ。国費解体の機会を逃し、今後町が解体することになれば、1億~2億円掛かるとの試算もあり、苦渋の決断だった。
 一方で、残した施設もある。町は損傷が軽微だった町立大野小を企業支援の拠点として活用している。町企画調整課の菅原祐樹課長補佐は自身も同小の卒業生だ。「机や教室など名残がある。知っている景色があるとほっとする」と喜ぶ。
 国費解体の申請締め切りが8月末に迫る双葉町でも同様の議論が続く。6月に入り、町立小学校2校については体育館などを除き残すことになったが、どう活用するかは決まっていない。
 そのうちの1校で、福島第1原発から3キロ圏内にある双葉南小の校舎内にはランドセルや運動靴などが残っている。同町の橋本靖治総務課長は「上履きのまま避難、下校して取りに戻れなかった様子が分かる。震災遺構として残す意見もあった」と説明。今後の活用方針は町全体で議論するという。
 大熊、双葉両町は公共施設を3Dレーザーで測量し、屋内の様子を3次元映像データとして残している。橋本課長は「建物を残しても、いずれは片付けるタイミングが来る。当時の様子も含めて伝承できる方法を考えたい」と語った。

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