遺族「命の価値軽い」 被害者支援に課題―大阪ビル放火きょう1年

東京, 12月17日, /AJMEDIA/

 大阪市北区の心療内科クリニックで26人が犠牲となった放火殺人事件は、17日で発生から1年となった。遺族は心に深い傷を負ったままだが、国の犯罪被害者給付金制度に基づく補償を巡る課題にも直面している。遺族の一人は「あなたの家族の命の価値は軽いと言われた」と悲痛な叫びを上げる。
 事件は昨年12月17日午前に起きた。クリニックに火が付けられ、院長や患者ら26人が亡くなり、患者だった谷本盛雄容疑者=当時(61)=も死亡した。
 国からの給付金は、事件前3カ月の収入などで算定される。しかし、休職や退職を余儀なくされ、クリニックで職場復帰を目指す「リワークプログラム」に参加していた被害者は、事件時は「無職」とみなされ、給付額が減らされる恐れがある。
 事件から1年を前に、夫を失った女性2人が「犯罪被害補償を求める会」(神戸市)を通じ、匿名で現在の心境を明らかにした。
 うち一人は、夫が病気で仕事を離れていたため、無職の算定になると聞いた。「夫の命の価値を被害にあったその瞬間の『収入』で測られ、あなたの家族の命の価値は軽いのだと言われたように思った」と強調。「政府や行政には『寄り添う』という言葉が言葉だけに終わらないために、どうすればよいのか。真剣に考えてほしい」と支援制度の改善を訴えた。
 もう一人も「私は生涯のパートナーを失い、子は大好きな父親を失った」とし、「私の時間はあの日で止まっている。あの日にとらわれたままだ」と苦しい胸の内を明かした。
 記者会見した同会によると、死亡事故で上限3000万円が支払われる自賠責保険に対し、犯罪被害者の遺族への給付金は平均約600万円。国に支援制度の拡充を求めているが、進んでいないのが実情だという。藤本護代表理事は「引き続き訴え掛けていくしかない」と力を込めた。

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