米フィリピン、対中国で急接近 軍事基地の使用拡大

東京, 4月20日, /AJMEDIA/

【ワシントン時事】東・南シナ海で覇権主義的な動きを強める中国に対抗し、米国とフィリピンが急接近している。2014年に結んだ「防衛協力強化協定(EDCA)」を改定し、米軍がフィリピン国内で使用できる基地を5カ所から9カ所に拡大することで合意。11日には約1万7000人が参加する過去最大規模の合同軍事演習が始まり、中国による台湾侵攻を想定して、沿岸防衛や島の奪還などの訓練を行っている。
米軍拠点から「攻撃させない」 防衛目的と説明―フィリピン大統領

 「米比関係は強力な追い風を受け、間違いなく正しい方向に進んでいる」。ロイヤル米筆頭国防次官補代理(インド太平洋安全保障担当)は18日、米上院公聴会でこう強調した。
 急接近の背景にはフィリピンのマルコス大統領の就任がある。昨年の政権発足以来、ドゥテルテ前大統領時代にぎくしゃくした対米関係を改善。今月11日にはワシントンで、外務・防衛担当閣僚による安保協議委員会(2プラス2)を約7年ぶりに開き、蜜月ぶりを誇示した。
 高まる中国の軍事的圧力も、関係強化を急ぐ理由だ。フィリピンは南シナ海で中国と領有権問題を抱え、中国の武力侵攻が懸念される台湾にも近い。オースティン米国防長官は「強力な米比関係を日本やオーストラリアを含む多国間のネットワークに統合し、集団的抑止力の強化に取り組む」と語っており、対中包囲網の一環であることを示唆した。
 ただ、米植民地だったフィリピンにとって、同盟国であり旧宗主国でもある米国との関係は複雑だ。1987年発効の現行憲法は、米国との基地協定失効後の外国軍基地設置を原則として認めておらず、米軍は92年までに撤退。その後はEDCAなどに基づき、米軍による一部の軍事施設利用を認めてきた。
 経済面での中国の存在感も、完全な「米国傾斜」にかじを切らない理由だ。マルコス氏は今年1月、中国を国賓待遇で訪問。習近平国家主席との会談で巨額投資の約束を引き出し、領有権問題で「相違点を適切に管理する」ことでも一致した。
 米軍による基地使用拡大に関しても、マルコス氏は災害対応や領土防衛が目的だと強調し、米軍のいかなる攻撃的な行動も認めないと明言。台湾有事での使用を当て込む米側を尻目に、中国への配慮をにじませている。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts