ブラジル唯一の邦字紙、生き残り手探り 文化的役割掲げ「サポーター」募集

東京, 04月30日 /AJMEDIA/

「邦字紙は風前のともしび」。約270万人と世界最大の日系社会を擁する南米ブラジルで唯一残る日刊邦字紙「ブラジル日報」が、生き残り策を模索している。日本からの移民の高齢化などによる購読者の減少が背景だ。邦字紙が果たす文化的役割を前面に掲げ、「サポーター」の募集を開始。岸田文雄首相の5月上旬の南米訪問に合わせた特別号でも存在感をアピールする方針だ。

 ブラジルでは第2次大戦中、敵性語となった日本語の新聞が発禁となった。移民の多くは日本語の短波放送から流れる大本営発表をうのみにし、邦字紙発行が再開された戦後の日系社会では、日本の戦勝を信じる「勝ち組」と敗戦を認める「負け組」の抗争が発生。ブラジル日報の深沢正雪編集長(58)は「日本語の新聞として正しい情報を伝えるという使命感が強くなった」と解説した。

 100年以上の歴史を持つブラジルの邦字紙は1998年に2紙体制となり、うち1紙は2018年末に廃刊。残る1紙も新型コロナウイルス禍のあおりで21年末に廃刊に追い込まれたが、邦字紙の発行継続に強い意欲を持つ投資家が資金を出し、22年1月にNPOを母体とするブラジル日報として再出発した。購読料と広告料だけでは黒字化が難しい構造的な問題は変わっていない。

 こうした中、国際協力機構(JICA)から23年11月に派遣された海外協力隊員の麻生公子さん(54)がサポータープログラムを考案。サポーターには、最低年3000レアル(約9万円)を支払えばなることができる。

 サポーターはブラジル日報を読むことができ、さらに支援額に基づく5種類のランクに応じて姉妹紙の購読や記事広告の掲載といった特典を与えられる。麻生さんは「邦字紙には日系社会を記録する役割がある。企業には広告を出してもらうというより社会的意義があると伝えたい」と語った。

 特別号では、日本とブラジルの経済交流に期待する関係者のコメントなどを掲載する。日本政府が中南米の日系社会との連携に取り組んでいるのも追い風だ。深沢編集長は「岸田首相にも目を通してもらいたい」と期待を示した。

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