破壊された家、住み続ける市民 個人負担や寄付で修繕―「戦後の支援待つ」・ウクライナ侵攻1年

東京, 3 月1 日, /AJMEDIA/

【キーウ時事】ロシア軍のウクライナ侵攻では砲撃などで多数の住宅が破壊された。ウクライナの大学の推計では住宅の被害総額は少なくとも540億ドル(約7兆3500億円)に上る。住宅の再建は寄付や住民個人の負担で行っている例が多く、市民は屋根や外壁が壊れた家に住み続けている。
◇自分で直す
 ロシア軍が一時占拠した首都キーウ(キエフ)近郊ブチャ。2018年以降に新築された高層アパートや住宅、店舗が並ぶ一角はロシア軍の拠点が置かれた。2月25日に訪れると、戦闘や砲撃の破壊の痕が建物に残る中、歩く家族連れやベンチに座って話す住民の姿があった。
 家の前で片付け作業をしていたトランペット奏者のセルヒー・ナウミクさん(28)は、新築の家に妻と住み始めた半年後に侵攻が始まった。ロシア軍撤収後の昨年4月、避難先から自宅に戻ると窓やドアが壊され、外壁には銃弾の痕。家の中はロシア兵が生活していた形跡があり、床には血痕があった。「(ウクライナかロシアか)どちらの人間が死んだのか考えると最初は怖かった。でもロシア兵ならむしろ良かったと思った。会うこともない」と話す。
 修繕への支援はなく、費用は自腹だ。「最初は支援を待ったが、冬が近づき自分でやらなければならないと考えた」と振り返る。窓やドアを自分で直し、昨年9月から再び住み始めた。ただ、高額な外壁や屋根の修理は手付かずで、2階は使っていない。「(侵攻下で)今は困難な時だと理解している。戦争に勝った後に支援があることを期待している」と語った。
 ◇「停戦後の大事業」へ準備
 ブチャのボクザルナ通りでは週末の25日も家の修繕を行う建設作業員が目立った。この通りは破壊された車両の残骸で道路が埋め尽くされた写真で知られる。
 外壁の修理をしていた一行に話を聞くと、西部リウネから来た作業員だった。修繕中の家に住む女性(46)は「(修繕費用は)払っていない。市が負担していると思う」と話す。通り沿いには支援者とみられる財団の看板もあった。
 ブチャはロシア軍占領下での民間人の被害が報道され、国際的に認知された。キーウに近く、各国の要人も視察に訪れてきた。ナウミクさんのように援助を受けていない人がいる一方で、支援が集まっている印象も受ける。
 一方、キーウから北へ車で約2時間のチェルニヒウ州。ロシア軍が侵攻した同州の村では2月上旬、修繕作業が進む建物は数えるほどだった。冬を迎える前はボランティアが汗を流していたが、作業が困難な冬場は活動が大幅に減った。
 同州などにボランティアを派遣するNGO「ドブロバット」も春まで活動を縮小している。共同創業者ビクトル・アンドルシフさん(39)は、ボランティアを派遣する交通手段や建設資材用の資金が不足していると指摘。「企業や各国に支援を訴えている」と強調する。
 チェルニヒウ市関係者は「大規模な(復興)事業は戦争が終わらないと難しいことは理解している。小さい事業ができることを期待しながら、(停戦後に)大事業が実行できるよう準備をしようとしている」と話していた。

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