温泉から「金」取り出す特殊な方法を開発 研究チーム

東京, 12月11日, /AJMEDIA/

温泉の中に溶け込んでいる微量の「金」を取り出す特殊な方法を海洋研究開発機構などの研究チームが開発。採掘以外の新たな回収方法として確立できるか注目されます。

開発したのは、海洋研究開発機構と大手機械メーカー「IHI」の研究チームです。

「金」はおもに地下深くにあるマグマに含まれ、その周辺を流れる数百度の熱水に溶け出た後、長い年月をかけて地表に上昇し冷え固まってできたものが「金」の鉱脈だと考えられています。

研究チームは、「金」が熱水に溶け出すことから温泉にも含まれているとみて回収方法を模索し、「ラン藻(そう)」と呼ばれる「藻(も)」の一種に着目。

この「ラン藻」は、温泉に溶け込んでいる「金」と結合している塩素などを分離し、「金」だけを吸着する性質があるということで秋田県の玉川温泉で最長およそ7か月、「ラン藻」を加工した特殊なシートを浸す実験を行い、「金」を採取できたということです。

最も濃度が高いものでは、30ppm=シート1トンあたり30グラム程度。

世界の主要な金山で鉱石1トンから採れる量が3グラムから5グラムほどだということで、「金」の新たな回収方法になる可能性があるとしてさらに実験を行う予定です。
海洋研究開発機構の野崎達生主任研究員は「初の分析だったが金が藻に集まるのを確認した。新たな回収方法として活用できると思う」、また、IHIの福島康之主任研究員は「予想を超える結果で、この技術をうまく育て、資源の循環につなげたい」と話しています。
なぜ“温泉”に着目?
「金」はおもに、地下深くにあるマグマに含まれています。

マグマ周辺にある地下水は数百度の高温で、この熱水に「金」が溶け出たあと、長い年月をかけて地表に向かって上昇。

その後、冷え固まってできるのが「金」の鉱脈だと考えられていて、山で採掘を行い、取り出すのが一般的です。

かつては新潟県の佐渡金山や北海道の鴻之舞鉱山などで多くの「金」が採掘されていましたが山での採掘にはばく大なコストがかかるため、次第に採算があわなくなり、いずれも閉山となっています。

現在、商業規模で操業を続けているのは国内では鹿児島県の菱刈鉱山のみで、年間およそ4トンの「金」を産出しています。

研究チームは、「高温の地下水に溶け込んでいるとしたら、温泉にも含まれている可能性がある」と考え、秋田県仙北市の玉川温泉で新たな方法を試しました。

実験場所に玉川温泉を選んだ理由については高温で、強い酸性のほうが「金」が溶け込みやすいという考えから源泉98度の熱水が毎分9000リットル湧き出る豊富な湯量に加えてpH1.2の日本トップクラスの強酸性であることを挙げています。
「藻」で「金」採取?
温泉に溶け出た「金」を効率的に取り出す上で研究チームが着目したのは、数十年前に発表されていた大学の研究成果。

藻の一種「ラン藻」に「金」を吸着する性質があることを明らかにしたという内容でした。

開発に携わったIHIの福島康之主任研究員は、「この『藻』を活用すれば、『金』を効率的に吸い付かせる材料を作れる」と考え、「ラン藻」の可能性を詳しく探りました。

福島主任研究員は熱水に溶け込んでいる「金」がおもに塩素と結合して化合物の形で存在しているとみて研究成果に基づき「ラン藻」を浸すと、「金」にくっついている塩素を切り離すことに成功。

これを応用することで「金」の回収ができると確信し、「ラン藻」をおよそ半年かけて培養した上で化学処理で粉末化して乾かし、シート状に加工。

これまでの採掘とは異なる方法を開発しました。

研究チームはこのほか、高温の熱水が噴き出している東京・青ヶ島沖の水深700メートル前後の深海でも無人潜水艇を使って「ラン藻」のシートを設置して、「金」を採取する実験を行っています。

熱水が噴き出している周辺の岩石には、平均で1トンあたり17グラムの高濃度の「金」が含まれているということで、来年、シートを回収し成果を確かめるということです。

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