消える救難捜索の「目」 安保戦略改定で部隊見直し―空自機、災害派遣で影響懸念

東京, 12月25日, /AJMEDIA/

 国家安全保障戦略など安保3文書改定に伴い、北海道から沖縄県まで配備されている航空自衛隊の救難捜索機「U125A」が順次廃止される。反撃能力(敵基地攻撃能力)の保有や宇宙・サイバーなど増大する任務に必要な人員・体制を確保するためだが、同機は消息を絶った空自機を捜す「目」の役割を果たしてきた。災害派遣、急患輸送にも使用されており、事故や災害時の対応への影響も懸念される。
 空自によると、U125Aはジェット機で計26機配備。北海道、宮城、秋田、新潟、石川、静岡、福岡、宮崎、沖縄各県などの空自救難隊で運用されている。自衛隊機の事故発生時に搭乗員を捜索するのが主な任務だ。
 要救助者を発見すると、収容する救難ヘリコプターに位置や現場の天候状況などを伝え、誘導する。遭難者にサバイバルキットも投下でき、初動で重要な役割を果たす。
 しかし、安保3文書の防衛力整備計画は、防衛力強化のため、既存の部隊見直しにも言及。「保有機種の最適化のためU125Aの用途廃止を進める」と明記した。
 防衛省は代替措置として、脱出した搭乗員の位置をピンポイントで特定できる衛星を利用した新型救命無線機を導入。ただ、墜落時の衝撃などで作動しなくなる可能性がゼロではないため、自衛隊内からは「一刻を争う人命救助の初動に関わるU125Aを廃止するのはどうか」との声もある。
 U125Aは災害派遣にもたびたび出動。地震発生時や豪雨の被害情報収集、都道府県知事の要請を受け急患輸送にも当たっている。今年4月に起きた北海道・知床半島沖の観光船沈没事故では、第1管区海上保安本部(北海道小樽市)の災害派遣要請を受け、千歳救難隊(千歳市)のU125Aが捜索活動を行った。
 自衛隊法上、自衛隊の主たる任務は国土防衛で、災害派遣は従たる任務に位置付けられている。国家安保戦略改定では、これまで以上に反撃能力保有など有事への備えに重点が置かれた。このため、災害派遣への対応に余力がなくなったり、抑制されたりするのではないかとの見方もある。
 浜田靖一防衛相は記者会見で「廃止後も捜索や災害派遣に遺漏のないよう万全を期す」と説明。「新たな国家安保戦略の下、抜本的に強化された防衛力を活用し、引き続き災害派遣についても重要な任務としてしっかり取り組む」と述べた。

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