尹大統領に試練 警察に批判、政権飛び火の兆しも―韓国雑踏事故から1週間

東京, 11月6日, /AJMEDIA/

韓国・ソウルの繁華街、梨泰院で156人が死亡した大規模雑踏事故は、5日で発生から1週間となる中、警察のずさんな対応が監察や捜査を通じて浮き彫りになってきた。政権批判に広がる兆しも出始めている。哀悼期間が明ける6日以降、責任追及が本格化する見通しで、尹錫悦政権は大きな試練を迎えている。
 政府は10月31日、全国69カ所に合同焼香所を設置。ソウル市だけで、これまでに約10万人が弔問に訪れた。ソウル中心部の焼香所では5日も、多くの市民が花を手向けた。
 インターネット上には事故当時の現場の映像が拡散し、衝撃は依然冷めやらない。死者156人のうち104人が20代で、2014年の客船「セウォル号」沈没事故で犠牲になった多数の高校生と同世代だ。沈民瑛・国家トラウマセンター長は「10代でトラウマを経験し、再び惨事に遭遇したこの世代が『世の中は危険だ』『自分は無力だ』と感じる懸念がある」と指摘する。
 事故当日、ハロウィーンを前に10万人以上が集まると予想された梨泰院に警官は137人しかいなかった警備計画に加え、現場の危険性を伝える事前の通報への対応も不十分だった。地元警察署長が、事故発生の50分後に現場付近に着いたにもかかわらず、事故直後に到着したように虚偽報告書を作成した疑いも出ている。
 今のところ批判の矛先は警察に集中しているが、尹政権の責任を追及する動きも出始めた。これまでも大統領退陣を求める運動を行ってきた市民団体は5日、ソウルで大規模な犠牲者追悼集会を開催。「尹政権はもはや存在意義を喪失した。引きずり降ろさなければならない」「真の哀悼は真相究明と新たなシステム構築だ」と訴えた。
 尹熙根警察庁長官と警察・消防を所管する李祥敏行政安全相に対しては、与党からも責任論が出ており、更迭は時間の問題とみられている。警察の「セルフ捜査」の限界も指摘され、最大野党「共に民主党」は今後、国会での真相究明を求める動きを強める見通しだ。
 セウォル号沈没事故では、当時の朴槿恵政権の対応に批判が集まり、16年の総選挙での与党惨敗や、17年の大統領弾劾につながる転落の始まりになったといわれる。
 尹氏は事故発生直後から指示を連発し、セウォル号事故当時とは違う迅速な対応をアピール。31日以降、毎日焼香所で黙とうをささげ、遺族らに寄り添う姿も見せた。5日には教会の礼拝で、「美しい花のような年頃の青年たちを守ってあげられなかった申し訳ない気持ちは、永遠に私から離れないだろう」と沈痛な面持ちで語った。

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