南西シフト、有事の備え鮮明 沖縄に「反撃能力」配備か―県民に不安も・防衛力整備計画

東京, 12月17日, /AJMEDIA/

 防衛装備品の調達目標などを示す「防衛力整備計画」では、那覇市の陸上自衛隊第15旅団を師団に改編するなど「南西シフト」が一層鮮明になった。沖縄本島には保有が明記された「反撃能力」(敵基地攻撃能力)の柱となる長射程ミサイルの配備も予想され、県民からは不安の声も漏れる。
 第15旅団は那覇駐屯地に司令部を置き、現在約2000人が所属する。計画では歩兵に当たる普通科連隊を一つ増やすとした。
 全体では1000人規模の増員にとどまり、他の師団より規模は小さいが、司令官は陸将に格上げされる。陸自関係者は「南西重視の表れだ。住民保護などやれることは増える」と話す。
 計画には国産ミサイル「12式地対艦誘導弾」を運用する2部隊の増設が盛り込まれ、1部隊は沖縄本島への配備が検討されている。
 12式は反撃能力が見込まれる長射程型を2025年度までに開発し、完了後は順次現行型から置き換える方針。沖縄にも将来的に長射程型が配備される可能性が高く、南西諸島では対空ミサイルやレーダーも増強される。
 このほか、南西地域での弾薬庫新設▽部隊展開や住民退避に必要な輸送船確保や空港・港湾の整備▽戦傷医療の拠点となる自衛隊那覇病院の機能強化などを記載。中国の海洋進出や台湾情勢を見据え、計画には「有事」への備えが並んだ。
 県民の思いは複雑だ。8月に中国の弾道ミサイルが近海に落下するなど、台湾情勢の緊張が身近な与那国島。島民の崎原孫吉さん(80)は、有事の現実味を感じ「備えるべきは備えるべきだ」と自衛隊の拡充を歓迎する。
 一方、太平洋戦争の沖縄戦を体験し、語り部を続ける糸満市の大城藤六さん(92)は国の方針に理解を示しつつも「先の戦争では友軍でさえ豹変(ひょうへん)した。住民は本当に巻き込まれないのか」と不安を見せる。平和運動に携わり県内のミサイル配備や基地増設に反対してきた岸本喬さん(59)は「少しずつ基地負担が減るかと思いきや、本土復帰前に後戻りしているようだ。やるせない」と憤った。

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