難航必至の防衛装備協議 秋解散観測で公明硬化

東京, 7月31日, /AJMEDIA/

岸田文雄首相が防衛装備品の輸出制限緩和に向け、自民、公明両党に検討再開を急ぐよう指示した。年末にかけて続く一連の首脳外交で、新ルールに基づくウクライナ支援などを打ち出したい考えとみられる。ただ、秋の衆院解散もあり得るとみる公明は支持者の反発を招きかねない議論に慎重で、難航は必至だ。
「秋解散」視野、与野党に課題 自民、公明と関係修復腐心―立民・維新は競合必至

 「努力に感謝する。議論を続けてほしい」。首相は25日、与党実務者協議の中心メンバーである自民・小野寺五典元防衛相、公明・佐藤茂樹党外交安保調査会長を首相官邸に呼び、こう語った。
 実務者協議は今月5日、中間報告をまとめて議論を中断。これに関する政府見解が示されるのを受け、秋以降に再開する予定だった。ところが首相指示は、政府見解を待たずに検討を続行するよう求める内容だ。
 輸出ルールを定めた防衛装備移転三原則の運用指針緩和は、昨年12月に閣議決定された国家安全保障戦略に明記された。与党は統一地方選後の4月下旬に実務者協議で議論を開始。中間報告は被侵略国への輸出と、国際共同開発した装備品の第三国移転を容認する方向性を打ち出す一方、輸出分野を救難、輸送、警戒、監視、掃海に限定した「5類型」の扱いは結論を先送りした。
 ボールは政府側に返したと考えていた与党にとり、首相の発言は「唐突」(実務者の一人)だった。首相は狙いを語らなかったが、与党内では「外圧」が背景にあるとの見方が出ている。外務副大臣経験者は「欧米がウクライナ支援の長期化に息切れし始め、バイデン政権が日本の関与拡大に期待を強めている。首相は9月以降に相次ぐ国際会議で支援を打ち出したいのだろう」と語った。
 英国、イタリアとの次期戦闘機共同開発を巡り、第三国移転に関する方針を早期に固めるよう求められている点も理由の一つとみられる。
 とはいえ、思惑通りに運ぶかは見通せない。最大の焦点となる5類型の扱いを巡っては、撤廃を主張する自民と、「地雷除去」などの追加にとどめたい公明が対立。自民関係者は「協議中断は溝が埋まらなかったからだ。再開しても堂々巡りだ」と漏らす。
 公明は姿勢を一段と硬化させている。党関係者は「衆院選前に結論は出せない」と指摘。石井啓一幹事長は28日の記者会見で「首相は時期を示して急いでほしいと言ったわけではない。腰を据えて議論したい」と語った。
 自民は8月中の協議再開を目指すが、公明と日程で折り合っていない。自民中堅は「首相が与党党首会談で年内解散はないと確約するくらいのことをしない限り、前に進まない」と嘆息した。

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