岸田首相「負の遺産」清算急ぐ マスク・森友・桜、安倍氏は不満?

東京, 12月27日, /AJMEDIA/

 岸田文雄首相が安倍晋三元首相の時代からの「負の遺産」の清算を急いでいる。21日には大量の在庫が問題視されていた「アベノマスク」を含む布製マスクの廃棄を表明。来年の通常国会に向け、野党の追及材料を事前に取り除く狙いがあるとみられる。ただ、最大派閥を率いる安倍氏を刺激しかねずリスクもはらむ。
 「布製マスクは希望の方に配布した上で、年度内をめどに廃棄を行うよう指示した」。首相は21日の記者会見の冒頭、アベノマスク一掃の方針を明らかにした。
 新型コロナウイルス禍でマスクが品薄となった昨春以降、安倍政権は全国民に配布するなどとして布製マスク約2億9000万枚を購入。しかし、供給不足が解消し、倉庫に眠る在庫は3月末時点で8272万枚に上った。保管料は2020年度だけで約6億円に達した。
 野党は先の臨時国会で「世紀の愚策のツケ」「在庫を抱え続けるつもりか」と批判し、通常国会でも追及する構えだった。政府関係者によると、発展途上国の援助物資などに活用できないか各省庁が知恵を絞る中、「早く捨てよう」と廃棄を主導したのは首相だった。
 首相は森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題でもかじを切った。自殺した財務省近畿財務局職員の遺族が真相解明を目指して起こした訴訟をめぐり、国の損害賠償責任を認めて訴訟を終える方針を14日に同省から伝えられると、「それでやってくれ」と了承した。これを受け、同省は翌15日、遺族の賠償請求を「認諾」。訴訟は終結したが、真相究明の機会は失われた。
 安倍氏が後援会関係者を多数招待し「行政私物化」と批判された「桜を見る会」も同様。首相は14日の衆院予算委員会で野党の追及に「大いに反省すべき点がある。私の内閣で開催することは考えていない」と早々に火消しを図った。
 自民党内には、「負の遺産」清算へ動く首相を「安倍氏は快く思っているはずがない」とみる向きもある。関係者によると、首相が布製マスク廃棄を事前に電話で報告した際、安倍氏は「ああ、そう」と言葉少なに答えたという。
 首相は23日、地元・広島特産のカキの薫製オイル漬けを土産に携え、衆院議員会館の事務所に安倍氏を訪問。官邸に戻った際、「年末のあいさつだ」と記者団に説明しつつ、「難しい話はない。心配しなくても大丈夫だ」と意味ありげに語った。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts