安保「時代は変わった」 中国が軍事台頭 米と対立 「日本の備え遅れている」 元自衛隊統合幕僚長・折木良一氏(熊本県津奈木町出身)

東京, 12月23日, /AJMEDIA/

 中国の軍事的台頭などで日本の安全保障環境が厳しさを増す一方、安保の領域は宇宙やサイバー(電脳)空間に広がる。軍事転用できる技術の進展も目覚ましい。自衛隊トップの統合幕僚長など国防の要職を歴任した折木良一氏(71)=熊本県津奈木町出身、埼玉県志木市=に安全保障の現状について聞いた。(隅川俊彦)

 -日本の安保環境をどう捉えますか。

 「時代が変わったと言えるほど激変した。根本は中国の台頭による米中対立の激化だ。宇宙やサイバー空間が戦闘領域と呼ばれ、迎撃が難しい極超音速兵器など技術も進歩した」

 -中国の軍事的台頭をどう見ますか。

 「この20年で中国の軍事費は約10倍になった。日本の約5兆円と比べ、4倍の約20兆円規模だ。人民解放軍は2027年に創設100年を迎える。中国建国100年となる49年には世界一の軍隊にするという。米中対立が大戦争に発展するとは考えていないが、摩擦があるのは現実だ」

 -中国が台湾への圧力を強めています。

 「中国の習近平国家主席は台湾統一を歴史的任務と言う。偶発的な衝突が起こることも含めて、日本も備えるべきだ。台湾有事は日本の問題。エネルギー、経済、金融、邦人の避難、考えるべき問題はたくさんある。法整備や権限の整理も必要だが、それは政治の決断。日米同盟を基軸に他国とも情報共有し、抑止力を高める必要もある」

 -AIやドローンなど軍事転用が可能な技術の進展が進んでいます。

 「昨年のアゼルバイジャンとアルメニアの衝突で、アゼルバイジャンはAIと無人機で、アルメニアの1500人規模の部隊を死傷させた。昔は考えられなかった話。最新技術が兵器として使われない世界にしなければならないが、現実はそうなっていない。国際的ルールが必要だ」

 「GPS(衛星利用測位システム)が社会に浸透し、衛星攻撃は社会リスクでもある。インターネット上のサイバー攻撃は相手の特定に時間がかかる」

 -米中などが迎撃困難とされる極超音速兵器の実験を進めています。

 「中国が今夏、発射実験を成功させ、米軍のミリー統合参謀本部議長は、極超音速兵器を『戦争の根本を変える』と表現した。日本も衛星網での探知、追尾を検討している。ただ、迎撃できなければ何にもならない。地・海上と連動するシステム装備が必要だ」

 -日本の備えは。

 「最先端に比べて遅れている。防衛費増額は必要。優先順位をつけて、国外との技術の共同研究や人材育成が急務だ。技術は科学、軍事と純粋に切り分けられない。昔は日本の防衛費増額は周辺の軍拡を招くという意見があった。中国や北朝鮮の状況をみれば、もう論理的に成り立たない」

 -防衛費の増額は賛否あり、情報公開が必要では。

 「部分公開は対外的な抑止につながる。それも含めて情報戦。情報分野も専門的人材の育成が必要だ」

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