参院選勝利も動揺隠せず 人事など「安倍系」処遇が焦点―岸田政権

東京, 7月12日, /AJMEDIA/

 参院選を乗り切った岸田政権が11日、再始動した。安定政権へ向け勝利を収めたものの、衝撃的な事件で安倍晋三元首相を失った動揺は隠せない。岸田文雄首相(自民党総裁)は8月にも内閣改造・党役員人事を行う方針だが、安倍氏が傾注してきた憲法改正などへの対応や、人事での「安倍系」議員の処遇が焦点だ。
 「偉大なリーダーを失った。結束を呼び掛けていかなければならない」。首相は11日の記者会見で、繰り返し「結束」に言及。その上で「思いを受け継ぎ、特に情熱を傾けられた拉致問題や憲法改正などの難題に取り組む」と訴えた。
 党内保守派を代表した安倍氏に対し、首相はリベラル勢力宏池会(岸田派)の領袖(りょうしゅう)。首相が結束や継承を強調したのは、「政策がリベラルに流れると保守系が騒ぎ出す」(関係者)との警戒感がある。
 首相にとって安倍氏は当選同期の友人。節目節目に保守派をまとめてきた安倍氏の下を訪れるなど日頃から気を使ってきた。保守派を抑える重鎮がいなくなり、コントロールが利かなく恐れもある。
 実際、首相は会見で改憲について「結党以来の党是実現へ国会の議論をリードしたい」と安倍氏に代わって旗振り役を担う意向をアピール。「できるだけ早く発議に至る取り組みを進める」と議論を加速させる考えも示したのは、安倍氏の背後に陣取る支持者への配慮とも言える。
 一方、人事は安倍氏と政治信条が近く目をかけられた高市早苗政調会長(無派閥)や、萩生田光一経済産業相ら安倍派議員の扱いがカギとなりそうだ。首相は11日の臨時役員会に先立ち、党本部で麻生太郎副総裁、茂木敏充幹事長と約30分会談。午後には首相官邸で茂木氏と短時間向き合った。臨時国会や人事の時期について意見交換したとみられる。
 首相は政策的に距離がある高市氏を「代えたがっている」(党幹部)との見方がある。高市氏をめぐっては、安倍派には当時の町村派から離脱したことを快く思わない向きも多いが、露骨な高市外しは保守派の反発を招きかねない。
 安倍氏の最側近だった萩生田氏は、首相の信頼も厚い。引き続き閣僚や党幹部に起用される可能性があるものの、派内にはやっかむ声もある。
 その安倍派は大黒柱を失い、後継者の選定が急務だ。11日は派閥事務所に下村博文、塩谷立両会長代理、西村康稔事務総長らが集まったが、結束を確認するにとどまった。閣僚・党役員経験者は多いがいずれも決め手を欠き、派内から「集団指導体制しかない」(中堅)との声が上がる。
 党幹部の一人は「安倍派の誰に相談すればいいのか分からない」と嘆いた上で、「難しい人事になる」と予測した。

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