中国の威嚇常態化警戒 政府、対話の糸口つかめず

東京, 8月9日, /AJMEDIA/

 中国が台湾周辺6カ所で始めた軍事演習は、予告した4日間を過ぎた8日も一部海空域で行われた。この間、中国軍の弾道ミサイル5発が日本の排他的経済水域(EEZ)に落下し、政府は「日本の安全保障に関わる重大な問題」(林芳正外相)と憂慮。中国による軍事的威嚇が常態化しかねないとみて警戒を強めている。
 岸信夫防衛相は8日の記者会見で「台湾海峡の平和と安定が重要との認識の下、今後も警戒監視に注力する」と表明。中国の弾道ミサイルが沖縄県・与那国島から約80キロの地点に落下したことを踏まえ、「関係自治体への連絡にも適切に対応する」と、周辺住民の安全確保に万全を期す考えを示した。
 今回の中国の軍事的圧力は、同国の警告を無視したペロシ米下院議長の訪台強行が直接のきっかけだ。ある外務省OBは中国の今後の出方について「ペロシ訪台を口実にニューノーマル(新しい状態)をつくろうとするだろう」と指摘。「衝突の危険性も増える。非常に緊迫した状態が常態化する」と警戒感をあらわにする。
 日本政府は安全保障面で米国と緊密に連携し、中国をけん制しつつ、相互依存度が高い経済面では協調を保つ硬軟両様の対応を使い分けてきた。だが、中国は軍事演習を批判し自制を求めた先進7カ国(G7)外相の共同声明に日本が名を連ねたことに強く反発。4日にカンボジアで予定していた日中外相会談を直前にキャンセルした。
 「対話は必要だ。対話は難しい状況のときも継続する努力をしなければならない」。外務省幹部は8日、こう語り、中国との対話を粘り強く探る考えを強調した。だが、日中国交正常化50年を迎える9月29日を前に「現時点では何のきっかけも見いだせない」(別の幹部)のが実情だ。
 政府内では「台湾有事は日本有事。国民保護の体制をつくるなど対処の準備をするしかない」(関係者)などと強硬論が台頭しつつある。中国の軍事的威嚇が常態化すれば、有事を前提に防衛力強化論が勢いを増し、対話が一段と遠ざかる恐れもある。

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