なぜニューヨークで起訴? 執念で「ゾンビ事件」立件―トランプ氏、口止め料疑惑

東京, 4月2日, /AJMEDIA/

【ニューヨーク時事】トランプ前米大統領が、故郷のニューヨークで起訴された。これまでもさまざまな疑惑が浮上しながら司直の手を逃れてきたトランプ氏だが、ついに「刑事被告人」に。ニューヨーク・マンハッタン地区検察による執念の捜査が立件につながったと言える。
◇顧問弁護士に実刑
 今回の罪状は明らかにされていないが、2016年の大統領選直前に、ポルノ女優ストーミー・ダニエルズさんに支払われた13万ドル(約1700万円)の不倫「口止め料」に関連するとみられる。この疑惑は「ゾンビ事件」と呼ばれるほど、マンハッタン地区検察が過去5年にわたり「何度も捜査を開始しては中止してきた」(ロイター通信)ものだ。
 最初にこの事件を追及したのは連邦捜査局(FBI)だった。18年4月、当時のトランプ氏の顧問弁護士で、支払いを肩代わりしたマイケル・コーエン氏の自宅を捜索。口止め料が選挙活動中の違法な「寄付」に当たると見なされ、コーエン氏は同12月、選挙資金法違反罪などで禁錮3年の実刑判決を受けた。
 だが、FBIなど連邦捜査当局はトランプ氏の刑事責任を問わなかった。18年当時、トランプ氏は大統領在任中。捜査当局を管轄する司法省には、現職大統領を訴追しないとの内規があった。
 ◇一族企業も標的
 これと並行して、マンハッタン地区検察も口止め料に関する捜査に着手した。トランプ氏はコーエン氏に口止め料を弁済した際、「弁護士費用」と偽ってビジネス記録に記載。これがニューヨーク州法違反に当たると判断した。
 ただ、記録改ざんは禁錮1年未満の軽犯罪にとどまることから、検察は捜査範囲を拡大。次第に、トランプ氏の一族企業「トランプ・オーガニゼーション」による資産価値の不正操作や脱税疑惑に注目が集まるようになった。
 同社は21年夏に脱税で起訴され、今年1月に罰金約160万ドル(約2億円)が言い渡された。この時もトランプ氏本人は訴追されなかった。
 ◇罪状に重罪か
 選挙で選ばれる地区検察トップには22年1月、アルビン・ブラッグ氏が就任した。ブラッグ氏は当初、トランプ氏の起訴に消極的とされ、それまで捜査を担当していた検事2人が抗議の退職。ブラッグ氏は異例の声明を出し、捜査は続いていると釈明した。
 声明発表から約1年。ブラッグ氏は資産価値の不正操作ではなく、口止め料疑惑での立件に踏み切ったもようだ。米メディアはこれまで、トランプ氏を重罪で刑事訴追するのは難しいとの見方も伝えていた。だが、報道によれば、今回の罪状には重罪も含まれている。

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