くすぶる「欧州の火薬庫」 セルビア・コソボ、対立再燃

東京, 12月31日, /AJMEDIA/

旧ユーゴスラビアを構成したセルビアとコソボの間で、車両のナンバープレートを巡る問題をきっかけに民族対立が再燃し始めた。セルビアとコソボは、ウクライナ情勢で対峙(たいじ)するロシアと米欧がそれぞれ後ろ盾。第1次大戦の引き金となり「欧州の火薬庫」と呼ばれたバルカン半島でくすぶる火種は、米欧や国際社会を巻き込む大きな戦火に発展する危険をはらんでいる。
 砲身が空をにらむ装甲車に、険しい表情の迷彩服の男たち。セルビア国防省が12月26日公開した動画は物々しい雰囲気に包まれていた。ブチェビッチ国防相は「大統領が最高度の戦闘準備を整えるよう命じた」と説明。コソボ国境付近に軍を展開したと明かし、一触即発の状態となった。
 アルバニア系住民が人口の約9割を占めるコソボは2008年、セルビアからの独立を一方的に宣言した。セルビア政府は独立を認めていない。
 コソボ北部はセルビア系住民が多数派で、国際社会の関与でどうにか社会の安定を保ってきた。しかし、対セルビア強硬派のクルティ首相が、これまで容認されてきたセルビア発行の車両ナンバープレートの使用禁止を決めたことで均衡が崩れた。
 反発したセルビア系住民は繰り返し道路を封鎖し、11月には行政トップら公職者が一斉に辞職。12月には抗議活動に加わったセルビア系元警官が「テロ容疑」で逮捕されたことで、セルビア系住民が対応を激化させた。
 仲裁に入った米国と欧州連合(EU)は12月28日、「コソボ政府が抗議活動に絡んでセルビア系住民を逮捕しないと保証した」とする共同声明を発表。セルビア系住民も封鎖解除に応じ、緊張は和らぎつつある。ただ、セルビアはコソボ独立を巡っては一歩も引かず、コソボもEU加盟を申請するなど独立国家としての体裁を整えることに躍起で、対話は平行線だ。
 北大西洋条約機構(NATO)がコソボの治安維持に戦力を割かれる懸念もあり、独メディアは「バルカン半島で再び暴力が燃え上がれば、得をするのはロシアだ」と解説。ベルギーのシンクタンクも「ナンバープレートの大失敗は一段と大きな問題の兆候だ」と事態悪化を警告している。

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