「中絶の権利否定」全米に衝撃 前代未聞の判決漏えい―中間選挙争点に急浮上

東京, 5月05日, /AJMEDIA/

米連邦最高裁が人工妊娠中絶を「憲法上の権利」と認めた判例を覆す可能性があると報じられ、全米に波紋を広げている。バイデン大統領は3日、最高裁判決が出る前にもかかわらず、中絶の権利の「法制化」に言及する異例の声明を発表。中絶の是非が11月の中間選挙の主要争点に急きょ浮上した。
 注目を浴びたのは、南部ミシシッピ州の中絶規制法の合憲性をめぐる裁判。米政治専門紙ポリティコが2日夜、裁判官の多数派による意見書の草稿をスクープした。草稿は中絶の権利を認めた1973年の「ロー対ウェイド判決」を「誤り」だとする内容。米メディアは一斉に同紙を引用し、「衝撃的ニュース」(ワシントン・ポスト紙)と大々的に伝えた。
 半世紀にわたり保護されてきた女性の権利を覆す中身もさることながら、判決前に最高裁の判断が外部に漏れるという前代未聞の報じられ方も驚きをもたらした。ロバーツ最高裁長官は3日、草稿が「本物」だと認めた上で「最終判断ではない」と強調。リークを「裁判所への信頼に対する裏切り」と断じ、流出元の調査を指示した。
 バイデン氏は声明で「女性の選択の権利は根本的なものであり、ロー対ウェイド判決は覆されてはならない」と指摘。「もし覆れば、判決を成文化する法律を成立させる」「選択の権利を支持する議員が、上下両院でより多く必要だ」と踏み込み、中間選挙で争点化するとの見解を示した。
 与党民主党の上下両院トップ、ペロシ下院議長とシューマー上院院内総務も声明で「保守派判事が憲法を引き裂いた」と非難。中絶の権利の法制化を急ぐ考えを示した。ただ、民主党にも中絶反対派の議員がいる。与野党が50人ずつで同数の上院では、与党から1人でも造反が出れば法案を通せないため、先行きは不透明だ。
 最高裁前には2日深夜から賛成派と反対派が多数集結し、反響の大きさを物語った。CNNテレビは、1月の世論調査で米国民の69%が中絶の権利を支持したことを挙げ、最高裁が草稿通りの判断を下せば「中間選挙で女性や民主党支持層の投票率が上がる可能性がある」と分析した。

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