陰謀論拡散、高い代償 米FOXが1000億円支払い―大統領選報道、メディアの責任問う

東京, 4月21日, /AJMEDIA/

【ニューヨーク時事】2020年米大統領選で「票が不正操作された」と偽情報を拡散したとして訴えられた保守系テレビ局FOXニュースが、7億8750万ドル(約1060億円)の和解金を支払うことになった。民主主義を揺るがす陰謀論に関してメディアの責任が問われた形で、無責任な加担には高い代償が伴うと示された。
米FOX、1000億円で和解 大統領選報道の名誉毀損巡り

 ◇集計機メーカーが提訴
 大統領選を巡っては、トランプ前大統領陣営は敗北を認めず「投票集計機が不正操作され、票がバイデン(大統領)へと付け替えられた」などと根拠を示さず主張。FOXはトランプ派の弁護士らを番組に出演させ、疑惑を広めた。
 これに対し、集計機メーカー「ドミニオン・ボーティング・システムズ」が21年3月、名誉を傷つけられたとして損害賠償を求め提訴。和解が発表された今月18日には審理が始まる予定だった。
 ◇虚偽の認識
 訴訟では、トランプ氏らの主張が虚偽だとFOX側が認識していたかどうかが焦点だった。
 ドミニオン社はこれまでに多量のFOX社内の内部資料を提出。これにより、看板司会者らが私的な会話では「(トランプ派の弁護士は)うそをついている。正気じゃない」「(選挙不正の主張は)常軌を逸している」などとやりとりしていたことが判明した。
 本音ではうそだと思いながらも、トランプ氏らの主張を報じ続けた理由として、ドミニオン社は視聴率の低迷を指摘した。FOXは米国で有数の視聴者数を誇るが、大統領選でいち早くバイデン氏優勢を伝えたことから、視聴者が別の保守系テレビ局に流れたと分析。実際に、不正を否定するツイートをした女性社員について「彼女を解雇してくれ。(会社の)株価が下がっている」と焦りを示すやりとりもあった。
 ◇「うそには結果」
 訴訟の行方が注目されたが、FOXは虚偽の主張だったと認め、土壇場で和解を選択した。裁判となり、公開の場で経営陣や司会者らが証言しなくてはならなくなる状況を回避したとみられる。
 今でも20年大統領選が「盗まれた」と信じる共和党支持者は多い。ドミニオン社の代理人は和解を受け「(FOXによる)うその連発がドミニオン社とこの国に危機的な損害を与えた」と強調。「真実は重要だ。うそには結果が伴う」と訴えた。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts