習氏3期目、一極化が加速 側近起用で異論排除―中国

東京, 3月6日, /AJMEDIA/

【北京時事】5日開幕した中国全国人民代表大会では、習近平国家主席(共産党総書記)の3期目を支える政府の新体制が決まる。習氏は主要人事を側近で固める見通しで、異論排除と権力集中が一層進む。しかし、習氏が誤った判断をしたときに歯止めをかける人物は不在。体制の危うさはかえって増している。
5日の開幕式では「一強」を体現するかのように、満足げにうなずきながら入場する習氏の後ろを、数人分の間隔を空けて新旧最高指導部メンバーが続いた。今回の全人代で退任する李克強首相は政府活動報告で、習氏の名前に14回言及し、忠誠を誓った。昨秋の党大会を経て3期目入りした習氏は、地方勤務時代からの側近を中心に気心の知れた人材を新指導部に多数登用してきた。
 象徴的なのが、首相の交代だ。習氏との路線の違いが指摘されてきた李克強氏の後任には、党序列2位、李強・政治局常務委員が11日に選出される見通しだ。浙江省を中心にキャリアを積んだ李強氏は、習氏が同省トップだったときに知遇を得た。李強氏が中央政府で勤務するのは初めてで、巨大な官僚機構を操縦できるのか手腕が危ぶまれている。
 しかも、昨年まで上海市トップを務めていた李強氏は約2カ月間の都市封鎖(ロックダウン)を強行し、経済停滞を引き起こした。厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策は習氏の肝煎りで始まった。市民の不満の声は早い段階で届いていたが、習氏に忠実な李強氏はなかなかロックダウンの解除に踏み切らなかった。
 ゼロコロナは昨年末に突然撤回されたが、経済と社会の混乱の影響は今も続いている。それにもかかわらず、5日の政府活動報告では、感染症に適切に対処したとして「決定的な大勝利を収めた」と自画自賛した。
 習氏が後継となる人材を意識的に育ててこなかったことも、体制の不安定要素だ。昨秋の党大会では、「ポスト習」となる幹部が最高指導部入りしなかっただけでなく、次世代の指導者候補である1970年代生まれの若手も党トップ200人の中央委員に入らず、「習の次は習」と指摘される状況が続いている。
 中国の改革派知識人は「一極化が強まれば周りの能力はどんどん低くなり、忠誠を誓う人しかいなくなる」と危機感をあらわにする。「誰が(首相ら高官に)なっても同じだ。今後10年は何も変わらない」と語った。

Follow us on social

Facebook Twitter Youtube

Related Posts