繰り返されたずさんな銀行経営 高額報酬、リスク追求招く―米

東京, 5月21日, /AJMEDIA/

【ワシントン時事】米欧での金融不安の端緒となった米中堅銀行シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻を巡り、同行の業績と連動した高額報酬が過度なリスク追求を招き、ショックに対して脆弱(ぜいじゃく)になった実態が浮かび上がっている。SVBの方が規模ははるかに小さいが、2008年の「リーマン・ショック」と似た構図。連邦準備制度理事会(FRB)の監督も甘く、ずさんな銀行経営が繰り返された格好だ。
6月の利上げ停止に含み 融資厳格化で―米FRB議長

 「リスクヘッジ(回避)しなかったのは、利益が減るからではないか」(ケネディ上院議員=共和党=)。16日の上院銀行委員会の公聴会では、証人として出席したベッカーSVB前最高経営責任者(CEO)に対し、リスク軽視の経営を問いただす声が上がった。SVBは、FRBが急激な利上げを進めた時期に、金利上昇時に先物取引などを通じ損失を低減するヘッジを止めていた。
 ベッカー氏は「ヘッジの決定はSVB財務委員会などが監督していた。詳細は知らない」などの弁明を繰り返した。
 FRBのバー副議長(金融規制担当)は18日の上院銀行委で、「SVBは利益を増やすため、リスクを一層取る措置を選んだ」と証言。FRBの報告書によると、SVBの報酬体系は「短期的な業績の最大化を促す」仕組みだったという。ベッカー氏の21年の賞与は現金部分で300万ドル(約4億1000万円)。また同氏は破綻前の今年2月、報酬の一環として自社株を売却し、約350万ドルを得た。
 米シンクタンク、ピーターソン国際経済研究所のニコラス・ベロン氏は「銀行は民間企業で、(報酬などに関する)契約の自由がある」と指摘。ずさんな経営が明るみに出るたび、規制をどこまで及ばせるか「非常に難しい議論になる」と話す。
 一方、SVB破綻では、FRBがリスクに気付きながら、結果として適切な是正措置を取れなかった。「監督で明らかな失敗がいくつかあった」(FRB高官)と自省の声も上がる。
 ベロン氏は「金融業は本質的に景気の上がり下がりの影響を受けやすく、危機は付きものだ」と指摘。「経営失敗の頻度を減らすことを目指す必要がある」と語った。

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